基本定義

IIの部とは、東京証券取引所のプライム市場・スタンダード市場等への新規上場申請の際に提出する申請書類のひとつで、正式名称は「新規上場申請のための有価証券報告書(IIの部)」という。上場審査における中心的な資料であり、申請会社のすべての内容にわたる会社説明書として位置づけられる。

IIの部は「Iの部」が公衆縦覧に供される申請書類であるのに対し、審査のために使用される書類であるため、その記載内容は主幹事証券会社の公開引受部門や審査部門、証券取引所の上場審査部門など上場審査の関係者以外に開示されることはない。

書類の概要

正式名称 新規上場申請のための有価証券報告書(IIの部)
対象市場 東証プライム市場・スタンダード市場、名証プレミア市場・メイン市場、札証本則市場 等
提出時期 主幹事証券審査入りまでにドラフト作成、上場申請時に最終版を提出
提出方法 原則として電磁的記録により提出
分量 概ね150〜200ページ以上(企業規模により数十ページ〜数百ページ)
公開の有無 非公開(審査関係者のみ閲覧)
主なチェック先 主幹事証券会社、証券印刷会社(監査法人は重点的にはチェックしない)

主な記載項目

IIの部の記載内容は東京証券取引所の「IIの部記載要領」によって定められている。Iの部よりも広範かつ詳細な記載が求められる。

I
上場申請理由
上場の目的、メリット、経緯等を具体的に記載
II
沿革
最近5年間における合併、会社分割、子会社・関連会社の新設・解散、事業譲受・譲渡、資本提携等
III
事業の概況
業界・市場の概況、事業内容、取引関係、事業所展開、研究開発、知的財産等
IV
企業グループの概況
子会社・関連会社の状況、役員等関係者の状況等
V
経営管理体制
経営組織、内部統制、コーポレートガバナンス、適時開示体制、リスク管理・コンプライアンス体制等
VI
株式等の状況
株主・株式の状況、新株予約権、インサイダー取引防止体制等
VII
経理の状況
経理組織、経理規程、月次決算、予算管理、資金管理、利益計画等
VIII
その他
訴訟、許認可、反社会的勢力排除体制等

作成から提出までの流れ

プロジェクトチーム編成
上場準備室等を中心に部門横断的な体制を構築
記載項目の把握・情報収集
記載要領の確認、各部門からの資料収集、情報システムの整備
ドラフト作成
主幹事証券審査入りまでに直近時点までの内容で作成
主幹事証券・印刷会社によるチェック
指摘事項の修正・更新を繰り返し実施
上場申請時に最終版を提出
電磁的記録により東証へ提出、提出後も更新・訂正あり

関連する書類との違い

Iの部

有価証券届出書の様式に準拠。上場承認後に公衆縦覧に供される。監査法人による監査報告書の添付が必要。上場後の有価証券報告書のベースとなる。

IIの部

Iの部よりも広範かつ詳細な会社説明書。審査専用のため非公開。主幹事証券会社・印刷会社がチェック。150〜200ページ以上の分量。

各種説明資料

グロース市場向けの申請書類。IIの部を簡素化したもの。一部の記載項目について既存資料での代替が可能。

作成上のポイント

  • 全社的なプロジェクトとして取り組む:経理部門だけでなく、各部門が一丸となって情報収集・作成に当たる必要がある。経営トップの関与も不可欠。
  • 情報収集体制の整備:役員の全職歴、退任役員の情報等、細かな情報が必要となる。業務フローの変更やシステム改修が必要となる場合もある。
  • 「ちょうど良い」記載を心がける:詳細すぎず簡素すぎない記載が、審査をスムーズに進めるコツ。審査担当者からの質問に先回りして回答するイメージで作成する。
  • 自身の言葉でわかりやすく丁寧に:他社事例は非公開のため入手困難。会社の実態を正確に理解してもらうことを最優先に、自社の言葉で記載する。
  • Iの部との整合性を確保:両書類間で矛盾が生じないよう、記載内容の整合性を入念にチェックする。

主な添付書類

IIの部には本文に加えて、多くの添付書類が必要となる。

1
取締役会・監査役会・経営会議等の議事録
2
計算書類(最近2年間)
3
法人税確定申告書及び勘定科目内訳明細書(最近2年間)
4
月次業績管理資料
5
年度予算計画書・中期経営計画書及び策定資料
6
内部監査に係る資料(最近1年間及び申請事業年度)
7
社内規程類
8
事務フロー(受注から回収・支払いに至る主要フロー)
注意

IIの部は非公開書類であるため他社事例を参考にすることが困難である。記載要領や印刷会社の手引書を参考に、主幹事証券会社と密に連携しながら作成を進めることが重要。また、提出後も上場日までに内容の変更・追加があった場合は更新資料の提出が必要となる。

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執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

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