CG報告書の提出タイミングと、市場区分による審査の温度差


この記事でわかること

  • 上場審査においてCG報告書がどう扱われるか。市場区分によって重要性が大きく異なること
  • 市場区分によってコンプライ・オア・エクスプレインの対象範囲が異なり、グロース市場は基本原則のみが対象であること
  • 機関設計と役員構成は上場規程とCGコードの両にらみで設計する必要があり、支配株主を有する案件やプライム市場を目指す場合に特に重要となること
  • CG報告書は引受審査の段階から主幹事にドラフトを提出し、上場承認日から公衆の縦覧に供されること
  • グロース市場では基本原則のみが対象であり、実務上は基本原則については、すべてコンプライを前提として組み立てることになること(ゆえに、上場審査上の重要性が低く扱われてしまっています)
  • グロース市場を目指す会社は上場時点では基本原則の充足で足りる一方、上位市場への移行の局面で何が必要になるか(筆者の見立て)

1. 結論 ― 審査での扱いは市場区分によって大きく異なる

先に結論を述べます。

グロース市場を目指す場合、上場審査においてコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」といいます)への対応状況が問われる重要性は正直、そこまで高くありません。説明義務の対象が基本原則に限られており、審査の中心は上場規程上の要件と、ガバナンス体制が実質的に機能しているかという実効性の評価にあるためです。正しく主幹事証券審査を受け、上場審査上の要件を満たせていれば、自ずと基本原則も充足できているという建付けになるとも言えます。(実際そうです)

一方で、プライム市場スタンダード市場を目指す場合は、基本原則と原則の全てが説明義務の対象となるため、記載内容とその遵守状況が問われます。CG報告書に書いた内容が、Ⅰの部やⅡの部各種説明資料の記載と整合しているかも確認されることになります。

ただし、グロース市場を目指す場合であっても、上位市場への移行を視野に入れるのであれば早めに意識しておく必要があります。移行の局面では説明義務の対象が一気に広がり、体制の整備には時間がかかるためです。

そして、いずれの市場区分であっても、具体的な対応は主幹事証券会社と相談しながら決めることになります。CG報告書は引受審査の段階から主幹事に提出(詳細な提出タイミングは主幹事ごとによります)し、記載内容について助言と確認を受ける書類です。エクスプレインとせざるを得ない項目が出てくる場合も含め、社内だけで判断する性質のものではありません。

以下、その内訳を見ていきます。

1-1. 制度上の位置づけ ― なぜ市場区分で差が出るのか

CGコードは、有価証券上場規程の別添として、上場会社に適用される規律です。ここで押さえておきたいのは、申請会社はまだ上場会社ではないのに、上場前にCG報告書を準備する必要があるという構造です。上場した瞬間から適用される規律について、上場日を待たずに対応状況を書面で示すことが審査上で求められています。

この構造から、審査で問われるものの性格が見えてきます。上場審査等に関するガイドラインは、ガバナンスに関する審査の観点として、役員の職務の執行に対する有効な牽制及び監査が実施できる機関設計及び役員構成であることを挙げたうえで、この点の上場審査は有価証券上場規程第436条の2から第439条までの規定に定める事項の遵守状況を勘案して行うものとしています。参照先は独立役員の確保等を定めた上場規程であって、CGコードではありません。審査の中心にあるのは、上場規程上の要件と、体制が実質的に機能しているかという実効性の評価です。

そうすると、CG報告書は審査基準そのものではなく、上場会社になったときにこう運営しますという表明文書として位置づけられることになります。そこで問われるのは、コードの各原則を実施しているかどうかというより、書かれている内容が申請会社の実態や他の申請書類の記載と整合しているか、という点だと考えられます。

そして、この表明文書がどこまで書き込まれるかは、市場区分によって大きく変わります。

なお、冒頭でも解説したとおり、基本原則については、上場審査上の要件をしっかりと準備し、満たせていれば、勝手にコンプライ出来ているという構図にもあります。

参考: 株式会社東京証券取引所「上場審査等に関するガイドライン」 https://jpx-gr.info/rule/tosho_regu_201305070042001.html


2. 市場区分によるCGコードの適用範囲の違い

CGコードは全上場会社に一律に適用されるものではなく、市場区分によってコンプライ・オア・エクスプレインの対象範囲が異なります。

図表01
市場区分別のCGコード適用範囲(2026年改訂版)
コンプライ・オア・エクスプレインの対象基本原則・原則4個+26個。プライム市場向けの上乗せ部分を含みます
独立社外取締役の数3分の1以上支配株主を有する場合は、支配株主から独立した独立社外取締役を過半数
コンプライ・オア・エクスプレインの対象基本原則・原則4個+26個。プライム市場向けの上乗せ部分は対象外です
独立社外取締役の数2名以上支配株主を有する場合は、支配株主から独立した独立社外取締役を3分の1以上
コンプライ・オア・エクスプレインの対象基本原則のみ4個。原則は説明義務の対象外です
独立社外取締役の数1名以上原則が説明義務の対象外のため、実務上は上場規程上の独立役員の要件が起点になります(この点は1名で上場する例も多く実務的かと思いますが、主幹事と相談ください。)
独立社外取締役の数に関する要件は、2026年改訂でも従前から変更されていません。なお、上場規程上は市場区分を問わず独立役員の確保が求められており、CGコードの適用範囲とは別の規律として存在します。

図表01:市場区分別のCGコード適用範囲(2026年改訂版)(東京証券取引所の公表資料に基づき作成)

2026年7月21日に確定した改訂版コードでは、プライム市場スタンダード市場の上場会社は基本原則と原則が、グロース市場の上場会社は基本原則のみが、それぞれコンプライ・オア・エクスプレインの対象とされています。改訂前は補充原則も対象に含まれていましたが、補充原則という区分自体が廃止されました。グロース市場が基本原則のみという構図は、改訂の前後で変わっていません。

ここで一点、実務上の整理として押さえておきたいことがあります。説明義務の対象が基本原則のみであることと、原則の内容を検討しなくてよいことは別の話です。理論上は、市場区分を問わず、自社のガバナンス体制がコードの各原則に照らしてどうかを一度は検討することになります。グロース市場の場合、その検討結果をCG報告書で説明する義務が基本原則に限られている、という違いにとどまります。

もっとも、実務の運用としては、市場による説明義務の有無が投入する工数を大きく左右します。この点は後述します。

あわせて、実務上の前提を一つ挙げておくと、基本原則をエクスプレインとしている事例は、筆者の知る限り見当たりません。基本原則は株主の権利・平等性の確保、ステークホルダーとの適切な協働、適切な情報開示と透明性の確保、取締役会等の責務という、いずれもガバナンスの根幹に関わる内容です。これを実施しないと説明することは、上場会社として想定しにくいと考えられます。したがってグロース市場の場合、CG報告書におけるコンプライ・オア・エクスプレインは、実質的にすべてコンプライを前提として組み立てることになります。


3. プライム市場・スタンダード市場では記載の中身が問われる

プライム市場スタンダード市場を目指す場合、基本原則と原則の全てがコンプライ・オア・エクスプレインの対象となるため、CG報告書に書く内容の分量も検討の深さも相応のものになります。

2026年改訂版コードは、「ひな型」的な表現により表層的な説明に終始することはコンプライ・オア・エクスプレインの趣旨に反するとし、単にコンプライとする場合であっても、具体的な取組みの内容と原則を実施していると評価できる合理的理由を示すことが望ましいとしています。上場時点で提出するCG報告書についても、この考え方は当てはまるものと考えられます。

特に、親会社との関係性整理や、関連当事者間の取引の手続、取締役会の実効性評価といった項目は、上場審査で確認される論点と重なります。CG報告書の記載と、Ⅰの部やⅡの部各種説明資料の記載が食い違っていれば、当然に説明を求められることになります。書類間の整合性という観点でも、CG報告書は独立した書類ではなく申請書類群の一部として扱うべきだと考えられます。


4. 機関設計と役員構成 ― 上場規程とCGコードの両にらみ

機関設計と役員構成は、上場規程とCGコードの双方から要件がかかる領域です。ここは切り分けて考えるのではなく、両にらみで設計することになります。

まず、上場審査の観点としては、第1章で見たとおり上場審査等に関するガイドラインが機関設計及び役員構成を挙げ、その判断は上場規程を参照して行われます。独立役員の確保をはじめとする上場規程上の要件が、いわば下限として存在します。

これに対してCGコードは、独立社外取締役の人数についてより高い水準を求めています。プライム市場では3分の1以上、スタンダード市場では2名以上とされ、さらに支配株主を有する場合には、支配株主から独立した独立社外取締役を、プライム市場では過半数、その他の市場では3分の1以上選任すべきものとされています。これに代えて特別委員会を設置することも考えられる旨が解釈指針に置かれていますが、いずれにせよ体制の設計に影響します。

そうすると、会社の状況によっては、上場規程上の要件を満たすだけでは足りないことになります。とりわけ重要になるのが、ファンドが株主として残る案件や親会社を有する案件、そしてプライム市場を目指す会社です。支配株主に該当する株主がいる状態でプライム市場を目指すのであれば、独立社外取締役を過半数とするかどうかという、取締役会の構成そのものに関わる判断が必要になります。頭数が変われば、人選に要する期間も変わります。

この点は上場後の話だから上場時には関係ない、と整理することもできますが、上場直後に構成を組み替えるのは現実的ではありません。上場時点の役員構成を決める段階で、CGコード側の要件も併せて検討しておくことになると思われます。

そして、この領域は明確に前倒しが必要です。理由は単純で、変更に時間がかかるためです。監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行には定款変更が必要で、株主総会の決議を要します。社外役員の選任も、人選、面談、就任承諾、株主総会決議という手順を踏みます。上場申請の直前に人を入れることは形式的には可能ですが、取締役会での発言や監査の実績がなければ、体制が有効に機能していることの説明ができません

上場審査で見られるのは、体制の存在ではなく実効性です。取締役会や監査役会の議事録、社外役員が実際にどのような指摘を行ってきたかといった運用の記録が、審査の材料になります。就任から日が浅ければ、その材料が積み上がっていないことになります。

したがって、機関設計と役員構成については、主幹事証券会社が決まる前の段階や主幹事証券会社が決まった早いタイミングから検討を始めておく必要があると考えられます。CG報告書に何をどう書くかを考える前に、体制そのものの設計が終わっている状態が望ましいと思われます。


5. いつから検討を始めるか

一方で、CGコード対応の全てを早期に始める必要があるかというと、そうではないと考えています。

図表03
ガバナンス関連の検討着手時期の目安(いずれにせよ主幹事証券会社と相談しましょう)
N-3期
〜N-2期
前倒しが必要機関設計の選択(監査役会設置会社/監査等委員会設置会社)、社外役員の人選と就任、取締役会の運営実務の定着。支配株主を有する場合やプライム市場を目指す場合は、独立社外取締役の人数がCGコード側の要件に左右されます
N-2期
〜N-1期
主幹事と並行独立役員の要件充足の確認、取締役会・監査役会等の運営記録の整備、関連当事者取引や役員の状況に関する論点の洗い出し
N-1期
〜申請期
主幹事と並行CGコードの各原則への対応方針の整理、CG報告書のドラフト作成、エクスプレインする項目とその理由の検討
上記は一般的な目安であり、実際の時期は主幹事証券会社との協議によって決まります。CG報告書の記載そのものは主幹事が付いた後の検討で対応できる一方、機関設計と役員構成は事後的な変更が難しく、実効性の説明にも一定の運用期間を要すると考えられます。

図表03:ガバナンス関連の検討着手時期の目安(筆者作成)

CG報告書の記載内容の検討や、各原則への対応方針の整理は、主幹事証券会社が決まった後からの着手でも十分に間に合うのが実務の感覚です。主幹事の公開引受部門はCG報告書の記載についても助言を行いますし、記載要領に沿った形式面の確認も引受審査の過程で行われます。この領域を、主幹事が決まる前に社内だけで作り込む実益は大きくないと思われます。

分けて考えるなら、体制そのものを変える必要がある事項は前倒し、書類に何をどう書くかという事項は主幹事と並行、という切り分けになります。前者は時間で解決するしかない一方、後者は着手すれば比較的短期間で形になります。

なお、プライム市場スタンダード市場を目指す場合で、どうしてもエクスプレインとせざるを得ない原則が出てくる場合は、早い段階で主幹事証券会社に相談しておくのが安全だと考えられます。エクスプレインの理由をどう説明するか、そもそも上場までにコンプライできる体制に持っていくべきかは、案件ごとの判断になります。上場承認と同時に公表される文書である以上、記載の是非を申請直前に検討するのは望ましくないと思われます。


6. CG報告書はいつ提出し、いつ公表されるか

新規上場時のCG報告書は、上場後の定期更新とは提出の流れが異なります。

図表02
新規上場時のCG報告書 ― 引受審査から公表まで
引受審査
主幹事証券会社の引受審査の過程でドラフトを提出。記載内容についてはこの段階から助言と確認を受けます
上場申請日
ドラフト版を提出。この時点では確定していない項目があっても差し支えないものとされています
上場承認日まで
確定版を電子データで提出。審査の過程で記載内容の確認や修正が行われます
上場承認日
JPXの新規上場会社情報ページに掲載され、公衆の縦覧に供されます。Ⅰの部と並んで、この時点から誰でも閲覧できる状態になります
上場日
TDnetを通じた登録を行います。以後は上場会社としての更新義務の対象になります
記載要領では、新規上場申請者は報告書の更新日欄に上場承認日を記載することとされています。

図表02:新規上場時のCG報告書 ― 提出から公表まで(東京証券取引所の公表資料に基づき作成)

まず、東証への提出に先立ち、主幹事証券会社の引受審査の過程でもCG報告書のドラフトを提出します。記載内容についてはこの段階から助言と確認を受けることになるため、実務上の最初の提出先は主幹事ということになります。

東証への提出については、新規上場申請に係る提出書類一覧によれば、CG報告書と独立役員届出書は、上場申請日にドラフト版、上場承認日までに確定版を電子データで提出し、別途、上場日にTDnetを通じた登録を行うものとされています。

実務上重要なのは、上場承認日の時点で、CG報告書がJPXの新規上場会社情報ページに掲載され、公衆の縦覧に供されるという点です。同ページには、Ⅰの部や適正性に関する確認書と並んでCG報告書の欄が設けられており、上場日を待たずに閲覧できる状態になります。上場日のTDnet登録は、適時開示システムへの登録という別の手続です。

したがって、CG報告書の記載は、上場承認の公表と同時に外部の目に触れることになります。ガバナンス体制について投資家に向けて最初に示す文書がこれであり、上場後の定期更新の出発点にもなります。ドラフトだからと形式的に埋めておくと、承認後にそのまま公開されることになります。

参考: 株式会社日本取引所グループ「新規上場会社情報」 https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/index.html


7. グロース市場では審査上どう扱われるか ― 主幹事証券会社にいた筆者の立場から

第1章で述べたとおり、グロース市場を目指す場合、上場審査においてCGコードへの対応状況が問われる重要性は正直なところ、高くないと考えています。ここでは、その内実と、それでも意識しておくべき点を整理します。

7-1. 審査の中心は上場規程上の要件と体制の実効性

基本原則のみが説明義務の対象であり、かつそれをコンプライとする前提に立つ以上、CG報告書の記載量はプライム市場スタンダード市場と比べて相当に少なくなります。審査においても、CGコードの各原則への対応状況そのものが正面から問われる場面は限られるというのが、実務上の受け止めではないかと考えられます。上場規程上の独立役員の要件を満たし、取締役会と監査役会が実質的に機能していることを説明できれば、ガバナンスに関する審査の中心はそこで足りるという構図です。

このことは、上場準備における優先順位にも直結します。上場準備には、内部管理体制の整備、規程の整備と運用、予算実績管理の精度向上、関連当事者取引の整理、申請書類の作成と、期限の決まった作業が山積しています。そこにCGコードの原則26個への対応を積み増すことの優先順位は、率直に言って高くありません。限られたリソースは、上場審査で正面から問われる領域に配分するほうが合理的だと思われます。

7-2. 上位市場への移行は、あらかじめ見据えておく

そのうえで、上位市場(プライム市場を上位市場と言ったら怒られることがありますが、敢えてそう呼称します)への移行は上場後の計画に織り込んでおくべき事項だと考えています。

グロース市場は、高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場と位置づけられています。市場のコンセプト自体が成長途上の会社を想定したものであり、そこに永続的に留まることを前提に上場する会社は多くないと思われます。制度面でも、グロース市場には上場維持基準として時価総額に関する要件が設けられており、2030年以降は100億円という水準が適用されることになっています。

つまり、移行を検討する局面が来ることは、上場の時点である程度見通せます。予期せぬ事態として降りかかるものではなく、成長シナリオの中に位置づけて準備しておける事項です。

その局面では、コンプライ・オア・エクスプレインの対象が基本原則4個から基本原則4個+原則26個へと一気に広がります。CG報告書の記載量が増えるだけではなく、それまで説明義務の対象外だった論点について、実際の体制と運用を用意する必要が生じます。

なかでも時間がかかるのが役員構成です。プライム市場では独立社外取締役3分の1以上、支配株主を有する場合は支配株主から独立した独立社外取締役の過半数が求められます。グロース市場上場時に独立社外取締役2名で組成していた会社が、移行の局面で人数を積み増すことになれば、人選から就任、そして取締役会での実績の蓄積までに相応の期間を要します。第4章で述べたとおり、この領域は時間で解決するしかありません。

とはいえ、これは上場前に対応せよという話ではありません。上場時点で原則の内容に一通り目を通し、移行の局面で何が必要になるかを把握したうえで、体制整備の順序を中期の計画に置いておく、という程度で足りると考えています。移行を決めてから原則を読み始める状態と、あらかじめ全体像を見据えている状態とでは、その後の段取りが変わってきます。

7-3. 解釈指針の扱い

もう一点、2026年改訂で新設された解釈指針の位置づけに触れておきます。解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象外とされていますが、原則の実施等を検討するにあたって参照することが期待されているとされています。グロース市場の会社にとっては原則自体が説明義務の対象外なので、直接の影響は小さいと考えられます。

ただし、投資家との対話や区分変更の局面で解釈指針に沿った対応の有無が問われるようになれば、実質的な参照範囲は広がっていく可能性があります。上場準備の段階で読み込む必要はありませんが、移行を検討する局面では原則とあわせて確認することになると思われます。


8. 結び

上場審査におけるCGコードの位置づけを整理すると、審査項目そのものではないが、提出書類を通じて審査で見られる材料である、ということになります。CG報告書の記載は上場承認日から公衆の縦覧に供され、上場後の更新の出発点にもなります。

グロース市場を目指す場合、審査上の重要性は高くありません。上場準備には期限の決まった作業が山積しており、原則26個への対応に工数を割く優先順位は高くないと考えられます。一方、プライム市場スタンダード市場を目指す場合は、基本原則と原則の全てについて記載内容と遵守状況が問われ、他の申請書類との整合性も確認されることになります。

いずれの場合も、機関設計と役員構成は主幹事証券会社が決まる前から、CG報告書の記載内容は主幹事が決まった後から、という切り分けが現実的だと考えられます。前者は時間で解決するしかなく、後者は引受審査の過程で整えていくことができるためです。上位市場への移行は成長シナリオの中に位置づけて準備できる事項ですから、原則の内容に一通り目を通し、体制整備の順序を中期の計画に置いておくことに実益があると思われます。上場前に対応を終える必要があるという意味ではありません。

具体的にどこまで対応するかは、会社の状況と目指す市場区分によって変わります。主幹事証券会社と早い段階で認識を揃えておくことが、結局は近道だと考えています。


参考文献・一次資料一覧

東京証券取引所・日本取引所グループ

政府・公的機関


本記事は、IPO準備に携わる実務家向けに、上場審査におけるCGコード及びCG報告書の取扱いを整理したものです。記載内容は公表資料及び筆者の実務上の見解に基づいており、個別の案件における取扱いは主幹事証券会社及び取引所との協議によって決まります。

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執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

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