基本定義

スタンダード市場とは、東京証券取引所における市場区分の一つであり、公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場である。

2022年4月の市場再編により、旧東証二部・旧JASDAQスタンダードを統合して設立された。プライム市場ほどの規模やグローバル展開はないが、国内市場で確固たる地位を築いている中堅企業に適した市場として位置づけられている。

市場の概要

市場コンセプト 上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えた企業向け市場
上場会社数 約1,607社(2024年3月末時点)
審査期間 約3ヶ月
提出書類 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅱの部)
コーポレートガバナンス・コード 全原則適用(プライム市場上場企業向けの原則を除く)

上場審査基準(形式要件)

スタンダード市場への新規上場には、以下の形式要件を満たす必要がある。

株主数 400人以上
流通株式数 2,000単位以上
流通株式時価総額 10億円以上
流通株式比率 25%以上
純資産の額 正であること
利益の額又は時価総額 次のいずれかを満たすこと
(a) 最近1年間の利益の額が1億円以上
(b) 時価総額が50億円以上かつ売上高が「最近1年間で40億円以上」もしくは「最近1年間の売上高前年比で100%以上の成長」
事業継続年数 3年以上

実質審査基準

形式要件に加え、以下の実質審査基準への適合が求められる。

1
企業の継続性及び収益性
継続的に事業を営み、安定的な収益基盤を有していること
2
企業経営の健全性
事業を公正かつ忠実に遂行していること
3
企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること
4
企業内容等の開示の適正性
企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること
5
その他公益又は投資者保護の観点から東証が必要と認める事項

プライム市場との実質審査基準の違いとして、「企業の継続性及び収益性」の要件において、プライム市場では「安定的かつ優れた収益基盤」が求められるのに対し、スタンダード市場では「安定的な収益基盤」とされており、収益水準の要求度が異なる。

上場審査の流れ

スタンダード市場への上場審査は、日本取引所自主規制法人により実施される。

事前確認
主幹事証券会社による引受審査完了後、東証への事前相談
上場申請
Ⅰの部、Ⅱの部等の申請書類を提出
ヒアリング
上場申請理由、会社の沿革、事業内容等について確認
質問・回答
書面による質問と回答のやり取り(複数回)
社長面談
代表者による事業内容・経営方針の説明
上場承認
申請から約3ヶ月

上場維持基準

スタンダード市場の上場会社は、以下の基準を継続的に維持することが求められる。

株主数 400人以上
流通株式数 2,000単位以上
流通株式時価総額 10億円以上
流通株式比率 25%以上
売買高 月平均10単位以上
経過措置適用会社の状況

2025年7月時点で、スタンダード市場において上場維持基準に適合していない企業は102社あり、特に「流通株式時価総額」や「流通株式比率」の未達が多い。これらの企業は改善期間中に基準を満たせなければ、2026年以降に上場廃止となる可能性がある。

プライム市場との主な違い

項目 スタンダード プライム
株主数 400人以上 800人以上
流通株式時価総額 10億円以上 100億円以上
流通株式比率 25%以上 35%以上
時価総額 250億円以上
利益基準 1年間で1億円以上 2年間で25億円以上
純資産 正であること 50億円以上
英文開示 任意 義務
上場審査料 300万円 400万円

グロース市場との主な違い

項目 スタンダード グロース
市場コンセプト 安定的な収益基盤を持つ企業 高い成長可能性を有する企業
株主数 400人以上 150人以上
流通株式時価総額 10億円以上 5億円以上
利益基準 1年間で1億円以上 なし(赤字上場可)
事業継続年数 3年以上 1年以上
提出書類 Ⅱの部 各種説明資料
審査期間 約3ヶ月 約2ヶ月
CGコード 全原則適用 基本原則のみ

上場に係る費用

上場審査料 300万円
新規上場料 800万円
年間上場料 上場時価総額に応じて72万円〜384万円

スタンダード市場を選択するケース

スタンダード市場が適している企業

国内市場で確固たる地位を築いている中堅企業、ガバナンス体制を整備し経営の透明性を高めたい企業、企業の知名度を上げ事業基盤をさらに強化したい企業に適している。グロース市場のようなベンチャー段階は卒業し、持続的な成長フェーズに入った企業が主な対象となる。

プライムからの移行ケース

旧東証一部上場企業であっても、主要な株主が国内に限られる企業や、プライム市場の上場維持基準を満たし続けることに負担を感じる企業は、スタンダード市場への移行を選択するケースがある。これは市場再編の趣旨に沿った適切な選択とされている。

スタンダード市場の位置づけ

スタンダード市場は、プライム市場とグロース市場の中間に位置し、一定の収益基盤と流動性を持つ企業向けの市場である。利益基準(1億円以上)が設けられているため、いわゆる「赤字上場」はできないが、グロース市場からの市場区分変更時には100億円基準の適用が免除されるなど、成長企業のステップアップ先としても機能している。

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執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

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