基本定義

独立役員とは、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役をいう。東京証券取引所の有価証券上場規程第436条の2において定義されている。

独立役員制度は、一般株主保護の観点から、経営陣から独立した役員を確保することを上場会社に義務づけるものである。会社法上の社外役員の要件に加え、東証が定める独立性基準を満たす必要がある。独立役員の法的な地位、責任範囲は会社法上の社外取締役・社外監査役と異なることはなく、その権限と責任、選任方法、任期等は会社法の範囲内で定められる。

制度の概要

根拠規定 有価証券上場規程第436条の2、上場管理等に関するガイドラインⅢ5.(3)
対象者 社外取締役または社外監査役のうち、独立性基準を満たす者
必要人数 1名以上(遵守すべき事項)
努力義務 取締役である独立役員を1名以上確保
届出 独立役員届出書の提出(変更時は原則2週間前まで)
違反時の措置 公表措置、上場契約違約金の徴求、改善報告書の徴求、特別注意銘柄への指定等

市場区分別の独立社外取締役の選任要件

コーポレートガバナンス・コード原則4-8において、市場区分ごとに求められる独立社外取締役の人数が定められている。上場規程上の義務(1名以上)に加え、以下の水準を満たすことが求められる。なお、CGコードは「コンプライ・オア・エクスプレイン」の手法の下、実施しない場合は理由の説明が求められる。

プライム市場 スタンダード市場 グロース市場
CGコード適用 全原則 全原則(プライム向け除く) 基本原則のみ
選任人数 3分の1以上 2名以上 2名以上
推奨水準 過半数 3分の1以上 3分の1以上

支配株主を有する上場会社においては、より高い水準が求められる。具体的には、プライム市場では過半数の独立社外取締役を選任するか、または独立性を有する特別委員会を設置する必要がある。

独立性基準(上場管理等に関するガイドラインⅢ5.(3)の2)

東証は「上場管理等に関するガイドライン」において、類型的に一般株主と利益相反の生じるおそれがある場合を規定している。以下の基準に抵触する場合は、独立役員として届け出ることができない。

区分 独立性基準の内容
A 取引先上場会社を主要な取引先とする者またはその業務執行者
B 取引先上場会社の主要な取引先またはその業務執行者
C 報酬上場会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家または法律専門家(法人の場合はその団体に所属する者)
D 過去最近においてA、BまたはCに該当していた者
※「最近」とは実質的に現在と同視できる場合。1年以上前は通常該当しない
E 親会社等就任前10年以内に次のいずれかに該当していた者
(A) 上場会社の親会社の業務執行者または非業務執行取締役
(B) 上場会社の親会社の監査役(社外監査役を指定する場合)
(C) 上場会社の兄弟会社の業務執行者
F 近親者A~Eに該当する者、上場会社・子会社・親会社・兄弟会社の業務執行者等(重要でない者を除く)の近親者(二親等内の親族)
「主要な取引先」の判断基準

「主要な取引先」とは、上場会社における事業等の意思決定に対して、親子会社・関連会社と同程度の影響を与え得る取引関係がある取引先をいう。具体的には、当該取引先との取引による売上高等が上場会社の売上高等の相当部分を占めている相手や、事業活動に欠くことのできない商品・役務の提供を行っている相手、多額の借入れ等の取引の相手である金融機関などが考えられる。「業務執行者」には業務執行取締役のみならず使用人を含み、監査役は含まれない。

属性情報(施行規則第415条第1項第6号)

独立性基準とは別に、独立役員届出書において以下の属性情報の開示が求められる。これらは該当することをもって直ちに独立性を否定するものではないが、独立性の程度を判断する材料となる。a~iの重要な者については近親者も同様の取扱いとなる。

区分 属性情報の内容
a 過去に上場会社またはその子会社の業務執行者であった者
b 過去に上場会社またはその子会社の非業務執行取締役または会計参与であった者(社外監査役の場合)
c 過去に上場会社の親会社の業務執行者または非業務執行取締役であった者
d 過去に上場会社の親会社の監査役であった者(社外監査役の場合)
e 過去に上場会社の兄弟会社の業務執行者であった者
f 過去に上場会社を主要な取引先とする者の業務執行者であった者
g 過去に上場会社の主要な取引先の業務執行者であった者
h 上場会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家または法律専門家(団体)に過去に所属していた者
i 上場会社の主要株主(法人の場合は当該法人の業務執行者等)
j 上場会社の取引先またはその出身者(f・g・h以外)※本人のみ
k 社外役員の相互就任の関係にある先の出身者※本人のみ
l 上場会社が寄付を行っている先またはその出身者※本人のみ

j~lについては、概要を記載するまでもないと判断した場合は、その理由を記載することで概要の記載を省略できる。また、軽微基準を定めて開示している場合は、該当項目のチェック自体を省略できる。

独立性基準と属性情報の関係

独立役員の属性と該当時期による判定

該当時期 上場会社・子会社の業務執行者等 親会社・兄弟会社の業務執行者等 主要な取引先、多額の金銭を得ているコンサルタント等の業務執行者等 主要株主の業務執行者 主要でない取引先、相互就任先、寄付先の業務執行者 左記に該当しない者
現在・最近 独立性なし
(社外性なし)
独立性なし 独立性なし 要開示 要開示 独立性あり
過去
(10年以内)
独立性なし
(社外性なし)
独立性なし 要開示 要開示 要開示 独立性あり
過去
(10年超)
要開示 要開示 要開示 要開示 要開示 独立性あり

IPO申請時の対応事項

上場申請時には、以下の書類において独立役員に関する情報を記載する必要がある。

1
独立役員届出書(ドラフト)の提出
上場申請書類の一部として提出。様式は東証所定のExcelフォーマットを使用
2
Ⅱの部における記載
独立役員の構成に関する方針、取締役である独立役員を確保していない場合の具体的計画
3
独立役員が期待される役割を果たすための環境整備の状況
独立役員との情報共有方法等
4
独立性基準への該当状況
各人および各人が現在・過去において所属する団体と申請会社との取引関係、人的関係、資本関係
5
株主総会招集通知における開示方針
独立役員に関する情報および社外役員の独立性に関する情報の記載方針

独立役員届出書の更新タイミング

株主総会前 独立役員・社外役員の構成が変わる場合や属性情報の記載内容に変更がある場合、2週間前までに提出。再任の場合も記載内容の更新要否を確認
期中(要提出) 独立役員を新たに指定する場合、独立役員を指定解除する場合(変更が生じる日の2週間前まで)
期中(次回総会時) 属性情報の有無・概要に変更がある場合、独立役員に指定していない社外役員が独立性基準に該当することとなった場合

関連する概念との違い

社外役員

会社法で定められた要件を満たす社外取締役または社外監査役。独立役員は社外役員のうち、さらに独立性基準を満たす者をいう。

独立社外取締役

独立役員のうち、取締役である者。CGコードでは市場区分に応じた人数の選任を求めている。

社外監査役

会社法上の社外監査役。監査役会設置会社では半数以上を社外監査役とする必要がある。独立役員として届け出ることも可能。

実務上のポイント

  • 独立性基準に形式的に抵触しない場合でも、実質的な判断により独立役員の要件を満たさないと判断されることがある(例:持株会社形態で重要な事業子会社の主要取引先の業務執行者である場合)。
  • コーポレートガバナンス・コード原則4-9に基づき、自社独自の独立性判断基準を策定・開示することが求められる。東証基準よりも厳格な定量基準を設ける会社が多い。
  • 独立役員を指定する場合の決定方法は取締役会決議に限らず、上場会社の任意で定めることができる。ただし本人の同意取得と届出書内容の確認が必要。
  • 独立役員が急病等のやむを得ない事情により一時的に不在となった場合、直ちに公表措置等が行われるとは限らず、ケースバイケースで判断される。
  • 独立役員の資格を満たす社外役員が複数名存在する場合でも、全員を独立役員として届け出る義務はない。ただし、届け出ない社外役員についても属性情報の記載が必要(全員指定の場合は省略可)。
よくある誤解

独立性基準に抵触しないことのみで独立役員の要件を満たすわけではない。独立性基準の抵触の有無に係る判断は上場会社単体で考えることで差し支えないが、上場会社における実質的な判断の結果、一般株主と利益相反が生ずるおそれがないとはいえない場合には、独立役員の要件を満たさない点に留意が必要である。

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執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

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