IPO準備実務

IPO準備実務に関する記事一覧

IPO審査でコーポレートガバナンス・コードはどう扱われるか

IPO審査でコーポレートガバナンス・コードはどう扱われるか

新規上場申請にあたり、コーポレートガバナンス・コード(CGコード)への対応が上場審査でどこまで問われるのかを整理します。グロース市場を目指す場合は説明義務の対象が基本原則に限られ、審査における重要性は高くありません。一方、プライム市場・スタンダード市場では基本原則と原則の全てが対象となり、記載内容と他の申請書類との整合性が問われます。機関設計と役員構成については、上場規程上の要件とCGコードの要件を両にらみで設計する必要があり、とりわけ支配株主を有する案件やプライム市場を目指す会社で重要になります。コーポレート・ガバナンスに関する報告書(CG報告書)の提出時期と、上場承認日からの公表についてもあわせて解説します。

2026年7月26日 IPO準備実務
コーポレートガバナンス・コード2026年改訂の全体像

コーポレートガバナンス・コード2026年改訂の全体像

2026年7月21日、金融庁と東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の2026年改訂版を確定・公表し、同日から施行されました。今回の改訂では基本原則が5個から4個、原則が31個から26個に再編され、補充原則47個という区分が廃止されています。補充原則の具体的な記述の多くは新設の「解釈指針」に移されましたが、解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象外とされました。もっとも改訂版コードは、これが対応コスト・開示負担の軽減のみを意図したものではなく、移管された記載の重要性が失われたわけでもないと明記しています。原則の内容面では、成長投資と経営資源配分の不断の検証(原則4-1・4-2)、有価証券報告書の株主総会前提出(原則1-2)、独立社外取締役と取締役会事務局を含む取締役会の機能強化が主要な論点です。開示原則は番号が大きく動いており、サステナビリティ等4つの開示原則が廃止されました。改訂版に対応したコーポレート・ガバナンスに関する報告書(CG報告書)の提出期限は2027年7月末日で、全上場会社に共通し決算期による区分はありません。総会サイクルに乗らない会社は単発

2026年7月24日 IPO準備実務
【スタートアップ資本政策】資本政策のアンチパターン① | 創業者が株式を持たないまま経営を担う

【スタートアップ資本政策】資本政策のアンチパターン① | 創業者が株式を持たないまま経営を担う

上場審査などでも創業者の持株比率が低いこと自体を禁じる規定はありません。資本政策上、それでも問題になるのは、資金調達・M&A・退職・上場という4つの節目で、いずれも誰が株式を持っているかが判断の前提になるためです。会社法上、普通決議は議決権の過半数、特別決議は3分の2以上で成立するため、単独で何を決められるかはこの2つの閾値との関係で決まります。エンジェルやシードの段階で持分の多くを放出してしまうと、その後のラウンドでさらに希薄化し、コーポレートアクションの難易度が上がります。議決権を確保する手段として種類株式を用いる例もありますが、上場に際しては整理が必要になります。買い戻すには相手の合意と資金が必要で、企業価値が上がるほど費用も増えるため、早い段階なら少額で済んだ是正が、ラウンドを重ねた後には大きな金額になります。本記事では、持分が問われる4つの場面を整理したうえで、是正に要するコストを企業価値の水準ごとに試算し、創業時に何を決めておけばよかったのかを具体的に示します。

2026年7月20日 IPO準備実務
【スタートアップ資本政策】資本政策のアンチパターン 第0回

【スタートアップ資本政策】資本政策のアンチパターン 第0回

資本政策は、創業時点から取り巻く問題であるにもかかわらず、規程や管理体制と違って後から直しにくい領域です。株主構成を変えるには原則、既存株主の同意と資金が必要で、企業価値が上がるほど負担は重くなります。しかも問題は日々の運営では表面化せず、追加の資金調達、会社の売却、経営陣や創業メンバーの退任、上場という節目を迎えたときに初めて問われます。本連載では、実務で繰り返し見られる失敗事例9類型を扱います。持分を持たない創業者、均等出資、退職者に残る株式、無計画な希薄化、早すぎる高いバリュエーション、SOプールの設計不足、親族・関係会社への分散、種類株式の条項の整理漏れ、上場直前期の株式移動です。

2026年7月20日 IPO準備実務
【IPO準備実務】IPOバリュエーションにおけるPER倍率は「いつの利益・どの利益」が乗算されるか

【IPO準備実務】IPOバリュエーションにおけるPER倍率は「いつの利益・どの利益」が乗算されるか

PERマルチプルによる想定発行価格の算出において、倍率を乗じる相手である予想当期純利益がどの期のものかは、制度上一義的に決まっていません。日本証券業協会は、理論価格の算定方法は主幹事証券会社のノウハウであり、価格設定のプロセスは詳細に規定されているわけではないとしています。最終的にバリュエーションを行うのは主幹事であり、どの部署が主導するかは証券会社ごとに異なりますが、いずれにせよ判断の土台になるのは会社の事業計画とその精度です。計画の信頼性が高ければ、より先の期の利益や強気の水準が採用され、プレミアムが乗ることもある一方、信用が置けなければディスカウントされます。実務の基本形は上場申請期(FY+1)の予想当期純利益ですが、獲得コストが先行し収益が翌期以降に計上される積み上げ型モデルでは、上場申請翌期(FY+2)の利益が用いられることがあります。この場合、公表される予想PERはFY+1ベースのままであるため、投資家の目には割高に映るというズレが生じます。類似会社側の期の揃え方、特別損益を排除する修正利益の作り込みも含め、いずれも主幹事との綿密な協議が不可欠です。

2026年7月15日 IPO準備実務
【IPO準備実務】IPOにおけるバリュエーションはどう決まるのか

【IPO準備実務】IPOにおけるバリュエーションはどう決まるのか

IPOの株価は、想定発行価格・仮条件・公開価格という3段階を経て決まり、企業価値評価の理論が直接効くのは最初の想定発行価格の段階です。実務の基本形は類似会社比較法(PERマルチプル)であり、更に公正取引委員会の実態把握では、証券会社の90.9%がIPOディスカウントを実施し、その水準は20%以上30%未満との回答が最多だったとされています。もっとも「類似会社のPER × 予想当期純利益 × (1−ディスカウント率)」という算出構造のうち、倍率は市場が、ディスカウント率は実質的に主幹事が決めるため、発行会社が主張できるのは類似会社及び予想当期純利益だけです。SaaSではPSR・EV/Revenue、創薬バイオではDCF・rNPVが用いられますが、手法の選択はいずれも「将来利益の割引」の裏返しにすぎません。未上場ラウンドはVCレート等を割引率とするDCF法が主流とされ、時にIPO時のPER評価との間に「評価軸の断絶」が生じます。本記事では、IPOにおけるバリュエーションの決定方法を理解しておくことにより、正しい資本政策に導きます。

2026年7月12日 IPO準備実務
SmartHRの上場延期と「PSR5倍」時代のIPOバリュエーションへの考察

SmartHRの上場延期と「PSR5倍」時代のIPOバリュエーションへの考察

SmartHRが年内に目指していた東証上場を見送ったと報じられています。ARR300億円到達を公表しながら、目標時価総額約1,600億円を投資家が高すぎると評価したためとされ、この額はすでに前回シリーズEの評価額約1,800億円を下回る水準でした。背景には、2020〜2021年のSaaSバブル期に平均20倍超を付けた売上マルチプルが、2025年には上場SaaS28社平均4.4倍まで圧縮されたという水準変化があります。本記事では、赤字先行のSaaSがPER(利益倍率)ではなくPSR(売上倍率)で評価される理由、EV/RevenueやNTM、Rule of 40といった指標の読み方を整理したうえで、PSR5倍前後を前提にすると、グロース市場の新たな上場維持基準(2030年以降、上場5年経過後に時価総額100億円)を満たすにはARR20〜30億円規模が要るという逆算を示します。IPO準備企業には、未上場の評価額ではなく公開市場の物差しから逆算する姿勢が求められると考えられます。

2026年7月11日 IPO準備実務
【2026年改訂】コーポレートガバナンス・コード改訂の解説ー原則83から30へ と削減

【2026年改訂】コーポレートガバナンス・コード改訂の解説ー原則83から30へ と削減

2026年4月に公表されたコーポレートガバナンス・コード改訂案では、コンプライ・オア・エクスプレインの対象が基本原則・原則に絞られ、補充原則は非対象の「解釈指針」に置き換わりました。原則数は83個から30個へと大幅に整理されていますが、これは負担軽減ではなく形式的対応の一掃を狙ったものと位置づけられており、丁寧なエクスプレインが求められる構造になっています。原則4-1・4-2では成長投資と経営資源配分の説明・検証が、原則4-14では取締役会事務局の機能強化が明記されました。グロース市場は基本原則のみが対象という枠組みは維持される見込みですが、成長の道筋と資本政策を語れる体制づくりは市場区分を問わず意味を持つと考えられます。上場準備段階からエクスプレインを前提にガバナンスを設計しておくことが、改訂の趣旨に沿った備えになるでしょう。

2026年7月8日 IPO準備実務
「記述情報の開示の好事例集2025」最終版が公表

「記述情報の開示の好事例集2025」最終版が公表

金融庁は2026年3月27日、「記述情報の開示の好事例集2025」の最終版を公表しました。2025年12月のサステナビリティ情報編に、MD&A・事業等のリスク・重要な契約・コーポレートガバナンス等の開示例を加えた二部構成で、有報の記述情報全般をほぼ網羅したとされています。好事例集は義務ではなく、当局と投資家が有用と見る開示水準を実例で示す資料と位置づけられます。共通の期待として、有報と任意開示の役割分担、将来情報を支える開示プロセスの整備と第三者チェック、AI分析を意識した機械可読性が挙げられています。SSBJ基準が2027年3月期からプライム大企業を対象に段階適用される流れのなかで、IPO準備企業にとっても、Ⅰの部の記述情報が上場後の有報に引き継がれる構造を踏まえ、自社固有の記載・開示体制づくりを上場準備に織り込む意義があると整理しています。

2026年7月8日 IPO準備実務
「取適法の外側」にも支払60日ルール ― 大企業間の製造委託を捉える新・特殊指定

「取適法の外側」にも支払60日ルール ― 大企業間の製造委託を捉える新・特殊指定

公正取引委員会は、取適法の対象外だった製造委託等の取引についても、受領日から60日以内の支払いを義務づける特殊指定(令和8年公正取引委員会告示第3号)を定めました。資本金・従業員の規模要件を満たさない大企業同士の取引でも、受注者の取引上の地位が劣後する場合には支払遅延が規制されます。施行は2027年4月1日。IPO準備企業・上場会社に求められる支払サイト・契約・内部統制の点検ポイントを、一次資料をもとに整理します。

2026年7月7日 IPO準備実務
I-ne特別調査委員会報告書の解説と東証「宣誓書違反」決定について~IPO準備企業への示唆~

I-ne特別調査委員会報告書の解説と東証「宣誓書違反」決定について~IPO準備企業への示唆~

2026年4月、株式会社I-ne(証券コード4933)の特別調査委員会は、代表取締役社長個人が主導した「新会社」設立・買収スキームに関する調査報告書を公表したとされています。社長が自己資金を元従業員に貸し付けて設立させた会社(RH社)が運営していたブランドを、I-neが18億円で買収する過程で、貸付額や資金の出所について取締役会・監査法人・東証審査への説明が事実と異なっていたと報告書は認定しています。委員会は、議決権を保有していなくても社長個人の実質的支配が認められれば関連当事者に該当し得ると判断しました。これを受けて東京証券取引所は2026年6月、2023年のプライム市場区分変更申請時の宣誓書の内容が事実と異なっていたとして、宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入りと上場契約違約金3,360万円の徴求を決定しています。本記事では事件の経緯を整理したうえで、宣誓書がIPO審査・市場区分変更審査で持つ重い意味と、関連当事者取引がⅡの部・各種説明資料で網羅的な開示を求められる制度的背景を解説し、IPO準備企業が押さえておくべき実務上の教訓をまとめています。

2026年7月4日 IPO準備実務
上場審査における取締役の兼務──常勤・非常勤で異なる判断基準と実務上の留意点

上場審査における取締役の兼務──常勤・非常勤で異なる判断基準と実務上の留意点

IPO準備における取締役の他社兼務について、上場審査上の考え方を解説します。常勤取締役は原則NG(資産管理会社は例外)、非常勤役員はISS等の基準を解説。東証の審査上の考え方、Ⅱの部・各種説明資料での記載方法、議決権行使助言機関のオーバーボーディング基準まで、実務経験をもとに整理します。

2026年2月19日 IPO準備実務
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