社長個人の"融資スキーム"はなぜ関連当事者取引と判断されたのか
この記事でわかること
- I-ne(4933)の特別調査委員会が認定した、代表取締役社長個人による「新会社」設立・買収スキームの構図
- 東京証券取引所が本件を「宣誓書違反」と認定し、再審査に係る猶予期間入り・上場契約違約金の徴求に至った経緯
- 宣誓書がIPO審査・市場区分変更審査においてなぜ特別に重い意味を持つのか
- 関連当事者取引が上場審査の「Ⅱの部」「各種説明資料」で網羅的な開示を求められる仕組み
- 関連当事者・子会社の該当性が「議決権の所有」だけでなく「実質的支配」で判断されることの実務的な意味
- IPO準備企業・上場企業が社内体制として押さえておきたい教訓
1. はじめに ― なぜこの事件を振り返るのか
2026年4月24日、株式会社I-neは特別調査委員会の調査報告書(公表版)を公表しています。その約2か月後の6月18日、東京証券取引所は同社について、市場区分変更申請時の宣誓書違反を理由とする再審査に係る猶予期間入り、および上場契約違約金3,360万円の徴求を発表しました。
本件が実務家にとって参考になるのは、単なる「社長による不適切な融資」の事例にとどまらない点です。争点の中心にあったのは、役員個人が議決権を持たずに設立した会社が、会計上「子会社」または「関連当事者」に該当するかという、連結範囲・関連当事者開示の実質判定の問題でした。さらに、2023年のプライム市場区分変更審査で提出した宣誓書の内容が事実と異なっていたとされ、区分変更からおよそ3年が経過した時点で猶予期間入りという重い措置に至っています。IPO準備中の企業やその実務担当者にとっては、市場区分変更審査における「宣誓」の重みと、創業者・オーナー経営者が個人として関与する取引の管理体制について、具体的な示唆を与える事案といえるかもしれません。
参考: 株式会社I-ne「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」(2026年4月24日)/東京証券取引所「宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入り及び上場契約違約金の徴求:(株)I-ne」(2026年6月18日)
2. 本件実行のタイミングはIPO直後
I-neは2020年9月に東証マザーズ市場へ上場し、2022年4月の市場区分見直しでグロース市場に移行、2023年9月にプライム市場へ区分変更したとされています。本件で問題となった一連の取引(RH社の設立からブランド買収まで)は2020年10月から2022年6月にかけて行われており、時系列としてはマザーズ上場直後からグロース市場在籍期間にかけての出来事にあたります。

この時期は、創業社長が大株主として強い影響力を持つオーナー型上場企業において、上場前の意思決定スピードやベンチャー的な事業運営を維持したいという動機と、上場会社に求められる利益相反管理・情報開示規律との間で緊張関係が生じやすい局面と考えられます。また、上場達成後に、様々な審査から解き放たれたということも影響があるかもしれません。 I-neも2022年3月に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行するなど、ガバナンス体制の強化を進めていた最中にこの取引が進行していたことになります。
3. 事件の経緯
登場する関係者・関係会社が多いため、まず主な関係性を整理します。RH社(株式会社Right Here、後にn社へ商号変更)は、I-neの元従業員(本記事では調査報告書の表記に従い「Ya氏」とします)を唯一の株主・代表取締役として設立された会社です。設立の資金は、I-ne代表取締役社長(以下「社長」)がYa氏個人に貸し付けたものが原資になっていたと報告書は認定しています。j社は、RH社の事業の一部を引き継ぐ形で、同じくYa氏を株主・代表取締役として後年設立された会社です。つまりRH社・j社はいずれも、社長個人からの資金提供と、元従業員が名目上の代表を務めるという共通の構造を持つ会社として登場します。
設立資金=社長個人からの貸付
RH社資金を原資に運営
※aブランドはI-neで開発された後にRH社へ移管され、2022年6月にI-neがRH社から18億円(税込19.8億円)で買収した
図表01:関係者・関係会社の相関図(特別調査委員会報告書の認定事実に基づき作成)
3-1. 「新会社」構想とRH社の設立(2020年10月〜12月)
特別調査委員会の報告書によれば、2020年10月、社長は経営幹部が参加するチャットグループに対し、自らの資金でYa氏を社長とする新会社を設立し、通販ブランド事業を行わせる構想を伝えたとされています。社長は当時、公認会計士や弁護士に対し、自身が新会社の株主にも経営にも関与しないことを前提に、利益相反や連結範囲の観点で問題がないかを相談していたことも、報告書内のチャット記録から確認できるとされています。
2020年12月25日、Ya氏を100%株主かつ代表取締役としてRH社が設立されました。もっとも報告書は、RH社の資本金払込みの原資が実質的に社長からの貸付金であったなど、設立当初から資金面での独立性に疑問が残る状態であったと指摘しています。
3-2. スキンケアブランドの移管とRH社の事業運営(2021年〜2022年前半)

I-ne社内で開発が進められていたスキンケアブランド(以下「aブランド」)は、2020年11月頃、RH社への移管が決まったとされています。RH社の事業運営自体はI-neの現職・元従業員を中心とする体制で行われ、資金繰りについても、社長からYa氏への貸付け(2021年1月〜2022年6月の累計で約4.82億円とされる)が原資になっていたと報告書は認定しています。
3-3. aブランド買収と取締役会での紛糾(2022年5月〜6月)
I-neは2022年、RH社からaブランドを18億円(税込19.8億円)で買収する計画を進めたとされています。2022年5月20日の取締役会では、監査等委員から、社長のYa氏への貸付金が買収代金を原資として社長に還流する構造なのであれば利益相反取引に該当し得るとの指摘がなされ、この議案はいったん取り下げられたと報告書は記載しています。
この過程で、社長は貸付額を実際の約4.7億円ではなく「3000万円」と説明していたと報告書は認定しています。その後、社長の貸付債権は知人ら4者に譲渡され、債権債務関係が形式的に解消される形が整えられた上で、2022年6月22日の取締役会で買収議案は原案どおり承認されたとされています。
3-4. 会計監査・東証審査における説明(2023年)

2023年1月に実施された監査法人によるYa氏へのインタビューに先立ち、社長の了解のもとで想定問答が準備され、資金拠出者が複数存在するかのような回答内容が記載されていたと報告書は指摘しています。同年のプライム市場区分変更に向けた東証審査でも、融資額を「3,000万円」とする回答書が提出されたとされています。
3-5. 発覚から特別調査委員会設置まで(2025年12月〜2026年4月)
2025年12月2日、外部機関からの指摘を端緒に本件疑義が浮上し、I-neは2026年2月12日に特別調査委員会を設置したと公表しています。調査期間中、社長を含む複数の関係者が、業務コミュニケーションに使用していたテレグラムやLINE等のデータを削除していた事実も確認されたとされています。委員会は同年4月24日に報告書を公表しました。
- 2020年10月「新会社」構想の発案 — 社長が経営幹部に自己資金での新会社設立を提案
- 2020年12月RH社設立 — Ya氏を100%株主・代表取締役として設立
- 2021年1月〜2022年6月累計約4.82億円の貸付け — 社長からYa氏へ、RH社の運転資金として
- 2022年5月20日取締役会で議案取り下げ — 監査等委員が利益相反の可能性を指摘
- 2022年6月22日aブランド買収を承認 — 18億円(税込19.8億円)で取締役会決議
- 2023年プライム市場区分変更審査 — 融資額「3,000万円」とする回答書を提出
- 2025年12月2日外部機関の指摘で疑義発覚 — 関係者によるチャットデータ削除も確認
- 2026年4月24日特別調査委員会報告書公表
- 2026年6月18日東証:宣誓書違反を認定 — 猶予期間入り・違約金3,360万円の徴求
図表02:事件の経緯タイムライン(特別調査委員会報告書・東証公表資料に基づき作成)
3-6. 会計上の論点に対する委員会の判断
本件の技術的な核心は、I-neがRH社の議決権を一切保有していないにもかかわらず、会計上の子会社または関連当事者に該当し得るかという論点にあります。連結財務諸表に関する会計基準第7項(3)は、緊密な関係にある者や同意者の議決権と合わせて過半数を有し、かつ役員派遣や資金調達の支配など一定の要件を満たす場合には、議決権を直接保有していなくても子会社に該当し得ると定めています。特別調査委員会は、RH社の重要な意思決定についてI-neという会社ではなく社長個人が支配していたと評価し、「RH社はI-neの子会社には該当しないが、関連当事者には該当する」と判断したとされています。同様の構図はj社についても認められると報告書は述べています。
| 資金の流れ | 金額(百万円) |
|---|---|
| aブランドの譲渡による収入 | 1,980 |
| Ya氏への借入金の返済(債権譲受人へ充当) | △459 |
| 関係者へのボーナス支払い | △2 |
| j社への貸付け(Ya氏経由) | △126 |
| RH社の税金支払い | △393 |
| その他、事業上の債務の弁済 | △535 |
| n社商号変更時点の残高 | 467 |
図表03:RH社が得たaブランド譲渡代金の使途内訳(調査報告書「第3・3(8)」の記載に基づき作成)
4. 事件の影響と制度改革

4-1. 東証による宣誓書違反の認定
東証は、I-neが2023年のプライム市場区分変更申請時に提出書類の真実性を誓約する宣誓書を提出していたにもかかわらず、その内容が事実と異なっていたことを重く見て、再審査に係る猶予期間入り(2026年6月18日〜2027年6月18日)と上場契約違約金3,360万円の徴求を決定したと発表しています。猶予期間中にプライム市場の新規上場基準に準じた基準への適合審査を通過すれば上場は継続し、通過できなければ上場廃止に至る仕組みとされています。
参考: 東京証券取引所「宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入り及び上場契約違約金の徴求:(株)I-ne」(2026年6月18日) https://www.jpx.co.jp/news/1023/20260618-13.html
4-2. I-neが公表した再発防止策
特別調査委員会は報告書の中で、経営陣の意識改革、代表取締役に対する牽制・監督機能の強化、取締役会の監督機能の実効性確保、関連当事者取引の管理体制整備、情報管理に関する諸制度の強化という5つの柱からなる再発防止策を提言したとされています。具体的には、関連当事者調査票の質問設計を見直し役員の非親族の関係者との経済的関係も捕捉できるようにすること、業務コミュニケーションに使用可能なツールの範囲を明確化すること、社外役員が管理部門に直接情報提供を求められるルートを整備することなどが挙げられています。I-neは今後、これらの提言を踏まえた具体的な施策を策定・実行するとしています。
5. 現在のIPO審査・市場区分変更審査への影響
5-1. 宣誓書とは何か、なぜ重い意味を持つのか
ここでいったん、「宣誓書」という書面そのものについて整理しておきます。有価証券上場規程は、新規上場の申請(第204条、第210条、第216条等)だけでなく、市場区分の変更申請(第301条第3項、第306条第4項等)についても、申請会社が「宣誓書」を提出することを求めているとされています。宣誓書は、申請会社とその代表者の名において、東証に提出する書類に必要な内容を漏れなく記載しており、かつその記載内容がすべて真実であることを誓約する書面です。実際、東証の内国株券上場契約書のひな形には、「新規上場申請及び上場審査において取引所に提出する書類に関し、必要となる内容を漏れなく記載してあり、かつ、記載した内容はすべて真実であります」という趣旨の条項が置かれていています。
上場審査は、東証が独自に会社の内部情報をゼロから調べ上げる仕組みではなく、会社側が提出する資料の真実性を前提に進められる、いわば自己申告を基礎とした審査の性格を強く持っていると考えられます。宣誓書・上場契約書における真実性の誓約は、その自己申告の基盤そのものを支える取り決めとして位置づけられています。
このため、宣誓書に反する事実、すなわち提出書類の記載内容が実際には真実でなかったことが後日判明した場合、東証の対応は通常の開示誤りの訂正とは一線を画すものになり得ます。 東証の「上場管理等に関するガイドライン」は、新規上場・市場区分変更等の申請に係る宣誓書における違反があった場合の審査を、上場廃止基準の該当性審査とあわせて行う旨を定めているとされ、宣誓書違反が上場契約の他の違反類型とは区別された、独立した重い違反類型として扱われていることがうかがえます。有価証券報告書の記載に誤りがあった場合であれば、訂正報告書の提出によって是正される場面も少なくありませんが、宣誓した内容そのものが事実と異なっていたとなると、審査プロセス全体の前提が揺らぐことになるため、東証はより重い措置、具体的には改善報告書の徴求、再審査に係る猶予期間入り、上場契約違約金の徴求、そして猶予期間内に基準を満たせなければ上場廃止に至る一連の枠組みを発動し得るとされています。I-neの事案で、区分変更からおよそ3年が経過した時点でなお遡って猶予期間入りという重い措置がとられた背景には、この宣誓書という書面が持つ特別な位置づけがあると考えられます。
IPO準備企業にとって重要なのは、宣誓書は新規上場申請時にも同様の枠組みで提出が求められている点です。上場準備の過程で開示すべき事実を一部でも留保したまま申請を進めることは、宣誓書の内容と実態との間に将来的な乖離を生む種をまくことに等しい、と捉えておくのが安全と考えられます。
参考: 東京証券取引所「上場管理等に関するガイドライン」(jpx-gr.info掲載)/東京証券取引所「内国株券上場契約書」(別記様式、jpx-gr.info掲載) https://jpx-gr.info/rule/tosho_regu_201305070043001.html / https://jpx-gr.info/rule/refdata/tosho_regu_201305070041001refdata0001.pdf
5-2. 市場区分変更審査における「宣誓書」の重み
本件は、審査時点の説明内容が後に事実と異なると判明した場合、区分変更から数年が経過していても遡って猶予期間入り等の措置が取られ得ることを示した事例といえるかもしれません。
5-3. 実質基準の継続的な充足
東証は本件について、区分変更審査時点における企業経営の健全性・ガバナンス・内部管理体制の実質基準を充足していなかった事案と認めたとされ、実態として継続的に基準を満たしていることが前提とされていると考えられます。
5-4. 社外役員の情報アクセス権に関する課題認識
報告書は、監査等委員が問題意識を持って質問していたにもかかわらず、執行側から独立した立場で情報を検証する組織的な仕組みが不足していたと分析しています。
5-5. 関連当事者取引は「Ⅱの部」「各種説明資料」で網羅的な開示が求められる
もう一点、IPO準備企業にとって直接的に関わる制度面を補足します。新規上場を目指す企業は、上場申請に際して、公表用の会社概要書類である「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」に加えて、プライム市場・スタンダード市場であれば非公開の審査資料「Ⅱの部」(有価証券上場規程施行規則第204条第1項第4号等)を、グロース市場であれば同様の位置づけを持つ「各種説明資料」(同施行規則第231条第1項第4号)を提出することが義務付けられているとされています。Ⅰの部が上場後に公衆縦覧される投資家向け開示書類であるのに対し、Ⅱの部・各種説明資料は主幹事証券会社の引受審査部門と東証の上場審査部門のみが目にする、審査専用の資料と位置づけられています。
これらの資料には、関連当事者との取引の状況を記載する項目が設けられており、取引の相手方、取引内容、取引条件の妥当性、利益相反を排除するための管理体制などを具体的に記載することで、特定の利害関係者との不透明な取引がないことを示すことが求められているとされています。
ここで開示対象となる「関連当事者」の範囲は、本記事4章で取り上げた会計基準上の定義、すなわち緊密者・同意者を通じた実質的支配を含む考え方に基づいているとされています。つまり、創業者・オーナー経営者が形式的な株式保有を持たない場合であっても、資金提供や重要な意思決定への関与を通じて実質的に支配している会社があれば、Ⅱの部・各種説明資料を通じて開示対象になり得ると考えられます。IPO準備企業に、本件のRH社・j社のような「創業者個人が資金を出し、元従業員等を名目上の代表者とする会社」との取引が存在する場合、上場審査の過程でその実態と利益相反管理体制を主幹事証券会社・東証に説明することが、実質的に義務付けられていると理解しておく必要があるでしょう。
I-neの事案そのものは、RH社の設立や取引が2020年の上場後に生じたものであるため、Ⅱの部の審査対象にはなっていなかったとみられます。もっとも、これから上場を目指す企業にとっての教訓としては、創業前後から存在する類似の資金関係・取引関係を上場準備段階で洗い出し、Ⅱの部・各種説明資料の時点で漏れなく開示しておくことが、本件のような形で後年に問題が顕在化する事態を防ぐ最も直接的な手段になると考えられます。
参考: 日本取引所グループ「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅱの部)記載要領」/法律事務所ZeLo「IPO準備で重要な『上場申請書類』とは?Ⅰの部・Ⅱの部の役割、必要書類一覧、審査のポイントを解説」 https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/documents/mklp770000005fl7-att/um3qrc000001qnnw.pdf / https://zelojapan.com/lawsquare/61996
6. IPO準備企業への教訓
創業者・オーナー経営者個人が関与する資金拠出スキームは、議決権の有無にかかわらず関連当事者取引に該当し得ることを前提に管理する必要があると考えられます。「自分は株主にも経営者にもならない」という説明だけでは、実質的な意思決定への関与があれば足りないという点は、専門家に相談する際にも徹底しておきたいポイントです。
関連当事者調査票などの社内チェック体制についても、役員本人とその親族以外の"密接な関係者"を捕捉できる設計になっているかを見直す価値があるかもしれません。本件のI-neの調査票は、対象役員と非親族の関係者との間の取引を組織的に捕捉する設計にはなっていなかったと報告書は指摘しています。
業務コミュニケーションに私用の高秘匿性チャットツールを使わせない、使った場合のデータ保全ルールを明確にしておくことも重要と考えられます。本件では、社長が「裏会社テレグラム」と称するグループで機微な意思決定を行っており、外部機関の調査開始と同時にアプリごと削除する行為があったとされ、これがコンプライアンス上の評価をさらに悪化させたと報告書は分析しています。IPO準備段階から、公式チャットツール以外でのやり取りを禁止・制限する情報管理規程を整備しておくことが望ましいと思われます。
社外取締役・監査等委員が執行側の説明を検証できる独立したルートを確保しておくことも欠かせません。本件では社外役員が適時に懸念を指摘していたにもかかわらず、最終的には不正確な情報を前提とした議決に至ったとされています。管理部門の担当者への直接のアクセス経路や、社外役員の判断で外部専門家の意見を独自に取得できる手続の制度化は、上場準備段階から設計しておく価値があるでしょう。
7. 結び
I-neの事案は、上場後の一取引が発端となり、市場区分変更審査という過去の手続にまで遡って評価が及んだという点で、IPO実務家にとって参考になる事例と考えられます。関連当事者・子会社の該当性は、株式保有関係という形式だけでなく、資金拠出構造や重要な意思決定への関与実態という実質で判断されること、そして市場区分変更時の宣誓が将来にわたって効力を持ち続けることを、あらためて認識させる事案といえるかもしれません。I-neは今後、猶予期間内にプライム市場の新規上場基準に準じた基準への適合を審査されることになるとされており、この動向自体も今後のプライム市場上場企業のガバナンス実務における参照点になるものと考えられます。
参考文献・一次資料一覧
東京証券取引所・日本取引所グループ
- 東京証券取引所「宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入り及び上場契約違約金の徴求:(株)I-ne」(2026年6月18日) https://www.jpx.co.jp/news/1023/20260618-13.html
- 東京証券取引所「上場管理等に関するガイドライン」 https://jpx-gr.info/rule/tosho_regu_201305070043001.html
- 東京証券取引所「内国株券上場契約書」(別記様式) https://jpx-gr.info/rule/refdata/tosho_regu_201305070041001refdata0001.pdf
- 日本取引所グループ「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅱの部)記載要領」 https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/documents/mklp770000005fl7-att/um3qrc000001qnnw.pdf
会社開示資料
- 株式会社I-ne「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」及び添付「調査報告書(公表版)」(2026年4月24日)
- 株式会社I-ne 2024年12月期有価証券報告書(報告書内の会社情報の基準時点として引用されているもの)
実務解説記事
- 法律事務所ZeLo「IPO準備で重要な『上場申請書類』とは?Ⅰの部・Ⅱの部の役割、必要書類一覧、審査のポイントを解説」 https://zelojapan.com/lawsquare/61996
本記事は、IPO準備に携わる実務家向けに、過去の事案から学ぶべき教訓を整理したものです。記載内容は特別調査委員会の調査報告書及び東京証券取引所の公表資料に基づいており、事実関係の詳細については各一次資料をご確認ください。なお、報告書中の一部の人物・関係会社の呼称は、原資料の匿名化措置に従っています。
IPOに精通した公認会計士の力で
あなたの会社のIPOを成功に導きます
株式会社プライムコンサルティングは、IPOを支援する専門家集団です。
監査法人・主幹事証券の立場からIPOを一貫して支援してきた実績を基に伴走します。
オンライン相談対応

