基本定義

コンフォートレターとは、IPO等の新規証券発行時に、監査人(公認会計士または監査法人)が主幹事証券会社の依頼に基づき、有価証券届出書等に記載された発行会社の財務情報の正確性およびその後の変動について調査した結果を報告する書簡である。

日本証券業協会「有価証券の引受け等に関する規則」第2条7号に定義されており、記載事項・内容等は日本公認会計士協会と日本証券業協会が共同で公表した「監査人から引受事務幹事会社への書簡」要綱に準拠して作成される。この制度は昭和50年(1975年)に発足し、実務として定着している。

概要

法的根拠 有価証券の引受け等に関する規則 第2条7号、第12条5項
実務指針 監査・保証実務委員会実務指針第68号「監査人から引受事務幹事会社への書簡について」
作成者 発行会社の財務諸表を監査した公認会計士または監査法人
宛先 発行会社および引受事務幹事会社の各社長の連名
日付 払込期日または受渡期日の前日(休日の場合は1日繰り上げ)
打切日 原則として払込期日または受渡期日の前7日以内

関係者の構造

コンフォートレターの作成にあたっては、監査法人、主幹事証券会社、発行会社の三者で業務契約書(三社間契約)を締結する。

三社間契約の締結
監査法人
作成者
主幹事証券会社
依頼者・受領者
発行会社
調査対象・同意者

コンフォートレターの役割

コンフォートレターは、主幹事証券会社が引受責任を果たすための重要な手続の一つであり、以下の3つの内容を担保する。

監査済財務諸表の信頼性

有価証券届出書等に記載されている監査済財務諸表について、監査報告書との整合性や正確な転記を確認する。

非監査項目の信頼性

監査対象外の財務情報(四半期データ、セグメント情報等)について、合意された手続に基づき調査を行う。

事後変動の確認

最近事業年度末日以降に生じた純資産の減少等、重要な財務状況の変動の有無を確認する。

記載事項

コンフォートレターには以下の8項目が記載される。

1
日付、宛先および打切日
打切日は監査人の責任の時間的限界を示す日であり、それ以降の事項について監査人は責任を負わない
2
書簡の前文
発行会社の同意を得て引受事務幹事会社から依頼された事項についての報告である旨を記載
3
届出書等に含まれている監査報告書等に関する記述
監査報告書または四半期レビュー報告書が含まれている場合の取扱い
4
調査事項、実施した調査手続および調査結果に関する記述
財務諸表等との照合、計算突合等の具体的な手続と結果
5
事後の変動の調査とその結果に関する記述
特定の財務項目(純資産等)の増減について報告
6
調査手続の十分性に関する記述
調査手続の範囲と方法の十分性については引受事務幹事会社に責任がある旨を記載
7
書簡の目的と利用制限に関する記述
引受事務幹事会社の調査目的のみに使用され、引用・転載・複製・翻訳の禁止を明記
8
発行会社と監査人との間の利害関係に関する記述
発行会社と監査人の間に利害関係がないことを改めて確認

作成の流れ

コンフォートレターは、新規証券の発行等の計画内定後、以下の流れで作成される。

三社間契約の締結
監査法人、主幹事証券会社、発行会社の三者で業務契約書を締結
調査事項・手続の協議
引受事務幹事会社から調査事項が提示され、三者間で内容を協議
草案の作成・提出
監査人が草案を作成し、発行会社および引受事務幹事会社に提出
調査手続の実施
合意された手続に基づき、財務情報の照合・事後変動の調査等を実施
コンフォートレターの発行
払込期日または受渡期日の前日に正式な書簡として発行

調査対象となる情報

調査対象に含まれるもの 監査済財務諸表、四半期レビュー済財務諸表、セグメント情報、月次連結財務諸表に基づく事後変動データ等
調査対象に含まれないもの 将来予測情報、経営者の主観的判断に基づく記述、監査人の専門外の事項

関連する主要用語

打切日

引受事務幹事会社に対する監査人の責任の時間的限界を示す日。原則として払込期日または受渡期日の前7日以内に設定される。打切日の翌日以降から払込期日までに生じた事項については、監査人は責任を負わない。

引受事務幹事会社

複数の証券会社が共同主幹事となる場合の事務取り纏め証券会社。コンフォートレターの依頼窓口となり、調査事項・手続の選定責任を負う。

事後変動

最近事業年度末日の翌日以降、打切日までに生じた純資産の減少等の財務状況の変動。新規証券発行の条件に影響するため、コンフォートレターの重要な調査項目となる。

合意された手続

監査人が引受事務幹事会社および発行会社との合意に基づき実施する調査手続。手続の範囲と方法の十分性についての責任は、調査を依頼した引受事務幹事会社にある。

実務上のポイント

  • コンフォートレターは引受審査の開始前に監査人から主幹事証券会社に提出される必要がある。受領しないまま財務情報に虚偽があった場合、主幹事証券会社が投資家に対する損害賠償責任を問われる可能性がある。
  • 調査手続の内容は発行会社ごとに異なるが、「監査人から引受事務幹事会社への書簡」要綱に示された一般的事例を基本として、三者間の協議により決定される。
  • 監査人が交代した場合、後任監査人は前任監査人が監査した期間における財務情報については責任を負えないため、調査手続の対象としてはならない。前任監査人への調査依頼は、前任監査人が受諾した場合のみ可能。
  • コンフォートレターの作成には監査法人への報酬のほか、書類の印刷代等の費用が発生する。早期の段階で内容と費用を確認することが重要。
  • 近年は監査難民問題により、監査法人の確保が困難なケースも増加している。IPO準備の初期段階で適切な監査法人を選定することが重要。
主幹事証券会社の「相当な注意」義務

金融商品取引法第17条・第21条により、主幹事証券会社は有価証券届出書に虚偽の記載があった場合、「相当な注意をしたにもかかわらず認知できなかったこと」を証明できなければ損害賠償責任を負う。コンフォートレターの受領は、この「相当な注意」を払ったことを証明する重要な手続の一つである。

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執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

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