流通株式
Tradable Shares / Floating Shares
基本定義
流通株式とは、上場有価証券のうち、大株主や役員等が所有する株式、自己株式など所有が固定的で流通可能性が認められない株式を除いた有価証券をいう。市場における株式の流動性を測る指標として、上場審査および上場維持基準において重要な役割を果たす。
概要
| 定義の根拠 | 有価証券上場規程施行規則 |
|---|---|
| 算定基準日 | 直前の基準日等現在 |
| 主な用途 | 上場審査基準、上場維持基準の判定 |
| 関連指標 | 流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率 |
流通株式数の計算方法
流通株式数は、上場株式数から流通性の乏しい株券等の数を減じて算出する。
流通性の乏しい株券等
東証では、以下の者が所有する株式を流通性の乏しい株券等として定めている。
2021年の定義見直し
国内の普通銀行、保険会社および事業法人等の所有する株式について、従来は10%以上所有の場合のみ除外対象であったが、改定後は10%未満の所有であっても流通株式から除外されることとなった。
ただし、直近の大量保有報告書等において保有目的が「純投資」と記載されている株式については、5年以内の売買実績が確認できる株主の所有分に限り、引き続き流通株式として取り扱う。
この定義見直しにより、いわゆる「政策保有株式」や安定株主対策として保有されている株式が流通株式から除外され、より実質的な株式の流動性が基準に反映されるようになった。
普通銀行の定義
都市銀行や地方銀行を指す。信託銀行・信託口、信用金庫、信用組合、労働金庫、農林系金融機関、政府系金融機関、証券金融会社等は含まない。
事業法人等の定義
金融機関および金融商品取引業者以外のすべての法人を指す。財団法人、学校法人等の法人も含まれる。
流通株式として扱われる例外
以下に該当する株式は、上記の流通性の乏しい株券等に含まれず、流通株式として取り扱われる。
- 投資信託・年金信託に組み入れられている株式、その他投資一任契約等に基づき運用することを目的とする信託に組み入れられている株式
- 投資法人の委託を受けて、資産保管業務のために所有する株式
- 証券会社等が所有する信用取引に係る株式
- DR(預託証券)に係る預託機関名義の株式
- その他、取引所が適当と認めるもの
市場別の流通株式に関する上場基準
東証の各市場区分において、流通株式に関連する新規上場基準は以下のとおり。
| 項目 | プライム | スタンダード | グロース |
|---|---|---|---|
| 流通株式数 | 20,000単位以上 | 2,000単位以上 | 1,000単位以上 |
| 流通株式時価総額 | 100億円以上 | 10億円以上 | 5億円以上 |
| 流通株式比率 | 35%以上 | 25%以上 | 25%以上 |
| 株主数 | 800人以上 | 400人以上 | 150人以上 |
上場維持基準も原則として新規上場基準と共通化されており、上場後も継続してこれらの水準を維持することが求められる。
実務上のポイント
- IPO準備段階での確認:主幹事証券会社とともに、現状の株主構成を踏まえた流通株式数を試算し、目標とする市場区分の基準を満たせるか早期に確認する
- 公募・売出しの設計:流通株式数や流通株式比率の基準を満たすため、必要に応じて公募増資や既存株主からの売出しを組み合わせる
- 政策保有株式の整理:2021年の定義見直しにより、事業法人等が保有する株式は流通株式から除外されるため、必要に応じて株主構成の見直しを検討する
- 純投資目的の証明:事業法人等が保有する株式を流通株式としてカウントするためには、大量保有報告書等での「純投資」目的の記載と5年以内の売買実績が必要
- 上場維持基準への対応:2025年3月に経過措置が終了し、本来の上場維持基準が適用されるため、基準未達の場合は改善計画の策定が必要
流通株式の判定は、形式的な株主名簿だけでなく、実質的な所有関係や保有目的も考慮される。特に、役員等関係者が実質的に支配する法人や、政策保有目的で保有されている株式の取扱いには注意が必要。判断に迷う場合は、主幹事証券会社や取引所に確認することが望ましい。
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