基本定義

決算短信とは、上場企業が証券取引所の適時開示ルールに基づき、決算発表時に作成・開示する決算速報である。有価証券報告書に先立ち、決算内容を迅速に投資者へ伝達するための書類として、上場会社に作成・開示が義務付けられている。

決算短信は、上場会社の貸借対照表・損益計算書をはじめとした決算情報が最も早く開示される資料であり、投資判断上最も重要な会社情報の一つとして、投資者・マスメディアから高い注目を集めている。

もともとは記者クラブが決算発表内容の標準化を上場企業に要請したことがはじまりであり、その後、証券取引所によって様式や開示ルールが整備された。

開示の概要

根拠規定 有価証券上場規程第404条(東京証券取引所の自主規制)
作成義務 すべての上場会社に義務付け
開示時期(通期) 決算期末後45日以内(30日以内がより望ましい)
開示時期(四半期) 決算期末後45日程度(30日以内がより望ましい)
開示方法 TDnet(適時開示情報伝達システム)への登録
閲覧方法 TDnet、EDINET、各社ウェブサイト
監査の有無 監査終了前の開示が可能(速報性重視)

決算短信の種類

決算短信は、対象期間に応じて以下の種類に分類される。

通期決算短信

事業年度(1年間)の決算内容をまとめた書類。年間の売上・利益や配当の実績に加え、翌期の業績予想も掲載されるため、投資判断において特に重要視される。

四半期決算短信

四半期ごとの決算内容をまとめた書類。累計期間で記載され、第1・第3四半期決算短信と第2四半期(中間期)決算短信に区分される。2024年の制度改正により、開示内容が見直された。

会計基準による様式の違い

決算短信の参考様式は、適用している会計基準に応じて日本基準、IFRS(国際財務報告基準)、米国基準の3種類が用意されている。また、連結財務諸表作成会社と非連結会社でも様式が異なる。

決算短信の構成

決算短信は「サマリー情報」と「添付資料」の2部構成となっている。

サマリー情報(表紙)

決算短信の冒頭1〜2ページに記載される要約情報。投資者が企業の業績を迅速に把握できるよう、主要な数値が一覧形式で簡潔にまとめられている。

1
連結経営成績
売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益、1株当たり当期純利益、自己資本利益率(ROE)等
2
連結財政状態
総資産、純資産、自己資本比率、1株当たり純資産
3
連結キャッシュ・フローの状況
営業活動、投資活動、財務活動によるキャッシュ・フロー、現金及び現金同等物期末残高
4
配当の状況
1株当たり配当金(中間・期末・年間)、配当性向、純資産配当率(DOE)
5
業績予想
翌期の売上高、営業利益、経常利益、当期純利益等の予想数値

添付資料

サマリー情報に記載される数値の詳細な説明や裏付けとなる財務諸表等が記載される。

1
経営成績等の概況
当期の経営成績の概況、財政状態の概況、キャッシュ・フローの状況、今後の見通し
2
会計基準の選択に関する基本的な考え方
適用している会計基準、IFRSへの移行予定等
3
連結財務諸表及び主な注記
連結貸借対照表、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、セグメント情報等

決算発表から開示までの流れ

3月決算会社の通期決算を例とした、決算関連書類の開示タイムライン。

3月末:決算期末
事業年度の終了
4月下旬〜5月中旬:決算短信の開示
決算期末後45日以内(30日以内がより望ましい)
5月中旬〜下旬:計算書類の作成完了
会社法に基づく計算書類の監査終了
6月下旬:定時株主総会
決算の承認・報告
6月末:有価証券報告書の提出
決算期末後3ヶ月以内(金融商品取引法による法定開示)

関連書類との比較

項目 決算短信 有価証券報告書 決算公告
根拠法令 証券取引所の自主規制(上場規程) 金融商品取引法 会社法
開示時期 決算期末後30〜45日 決算期末後3ヶ月以内 定時株主総会後
監査 監査終了前でも開示可 監査済み 監査済み
情報量 要点のみ 詳細 財務諸表のみ
特徴 速報性重視 正確性・網羅性重視 法定開示

実務上のポイント

  • 決算短信は監査終了前に開示できるため、有価証券報告書提出後に内容が訂正される可能性がある。訂正が生じた場合は「決算発表資料の訂正」として開示が必要となる。
  • 東証は決算期末後50日を超える開示となった場合、遅延理由の開示を求めている。開示の早期化に向けた社内体制の整備が重要となる。
  • 業績予想は将来予測情報であり、実績と乖離する可能性がある。予想と実績に一定以上の乖離が生じた場合は、業績予想の修正開示が必要となる。
  • IPO準備会社においては、上場申請時に過去の四半期決算短信の作成実績(トライアル含む)や、上場後の決算発表早期化への取組みについて説明が求められる。
  • 決算短信のTDnetへの登録に際しては、PDFファイルに加え、XBRLファイル及びHTMLファイルの提出も求められている。

IPO審査における決算短信

新規上場申請に際して、決算短信に関連する以下の事項について説明が求められる。

適時開示体制 決算発表に要する日数、月次決算の取りまとめに要する日数、適時開示体制の整備状況
決算短信作成実績 トライアルを含む決算短信の作成実績、作成完了予定日と実際の作成完了日
早期化への取組み 決算発表早期化に向けた具体的な取組み内容
業績予想 業績予想の公表方針、修正方針、乖離状況の把握方法
添付書類 申請事業年度の第1及び第3四半期累計期間の四半期決算短信の提出
2024年制度改正について

2024年4月より、四半期報告書の廃止に伴い四半期決算短信の開示制度が見直された。第1・第3四半期決算短信では、四半期連結財務諸表に対するレビューの有無の記載や、セグメント情報・キャッシュ・フローに関する注記の開示が新たに義務付けられている。

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執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

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