オファリングフォーマットとは、IPO時における株式の募集・売出しの形態を指す。国内投資家のみを対象とする国内オファリング、北米を除く海外投資家にもアクセス可能な旧臨時報告書方式、米国を含む全世界の投資家を対象とするグローバルオファリングの3形態がある。

3形態の比較

項目 国内オファリング 旧臨時報告書方式 グローバルオファリング
対象投資家 国内投資家のみ 国内+海外(北米・カナダ除く) 全世界(米国含む)
主な開示書類 和文目論見書 和文目論見書 和文目論見書+英文目論見書
英文目論見書 不要 不要 必要(数百ページ)
準拠規制 金商法 金商法 金商法+Rule 144A / Regulation S
追加コスト なし 低~中程度 高(3~4億円程度)
適したケース 小~中規模案件 中規模案件で海外需要も取り込みたい場合 大型案件(目安:300~500億円以上)

各形態の特徴

国内のみ

国内オファリング

日本国内の投資家のみを対象とした標準的な募集・売出し形態。和文目論見書のみで対応可能であり、手続き・コストともに最も軽い。

国内の機関投資家・個人投資家で十分な需要が見込める場合に選択される。

北米除く海外

旧臨時報告書方式

英文目論見書を作成せず、和文開示資料で海外投資家(北米・カナダ除く)へ販売可能な形態。

グローバルオファリングに比べコスト・負担が軽く、欧州・アジアの機関投資家にアクセスできる。

全世界

グローバルオファリング

Rule 144A(米国向け)・Regulation S(米国外向け)に準拠した英文目論見書を作成し、米国を含む全世界の機関投資家を対象とする形態。

大規模な資金調達や海外での知名度向上を目指す大型案件で選択される。

「旧臨時報告書方式」の名称の由来

2017年2月14日以前の「企業内容等の開示に関する内閣府令」では、海外で株式の募集・売出しを行う場合、臨時報告書の提出が必須とされていた。

2017年2月14日施行の改正により、有価証券届出書に所定事項を記載すれば臨時報告書の提出は不要となった。しかし、英文目論見書を作成せずに海外投資家へ販売する方式は引き続き利用されており、「旧制度では臨時報告書を提出していた方式」という意味で「旧臨報方式」と呼ばれている。

Rule 144A と Regulation S

グローバルオファリングで米国投資家にアクセスするためには、米国証券法上のRule 144A(米国内の適格機関投資家向け私募)とRegulation S(米国外向け)に準拠した英文目論見書の作成が必要となる。これにより、SECへの登録なしに米国の機関投資家への販売が可能となる。

実務上のポイント

  • 旧臨報方式でも英文のロードショーマテリアル(投資家向け説明資料)の準備は必要となる
  • グローバルオファリングは、英文目論見書の作成・監査対応・デューデリジェンス・海外ロードショーなど、国内IPOに比べ大幅な追加工数とコストが発生する
  • 近年は旧臨報方式でも海外販売比率を高める事例が増加しており、グローバルオファリングとの境界線が曖昧になりつつある
  • オファリングサイズや主幹事証券のチーム体制、海外投資家の需要見込みなどを総合的に勘案して形態を選択する
形態選択の判断基準

オファリングサイズが300~500億円程度を超える大型案件や、テック系企業など米国機関投資家の評価が重要となるケースではグローバルオファリングが選択されることが多い。一方、追加コスト・負担を抑えつつ海外需要を取り込みたい場合は旧臨報方式が有効な選択肢となる。

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執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

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