任意ロックアップ
Voluntary Lock-up
基本定義
任意ロックアップとは、上場直前期以前から株式を保有している株主と主幹事証券会社との間で、上場後一定期間、保有株式の売却等を行わない旨を自主的に確約する契約のこと。制度ロックアップの対象とならない株主に対して、株価安定化のために設定される。
任意ロックアップは、取引所規則に基づく制度ロックアップとは異なり、主幹事証券会社が任意に設定するものである。大株主や役職員が保有株式を上場直後に売却することは、投資家の投資判断における不安材料となるため、事前に売却しない旨の確約を求めることで、上場後の安定した株価形成を促進する目的がある。
任意ロックアップの概要
| 設定主体 | 主幹事証券会社(任意で設定) |
|---|---|
| 対象者 | 上場直前期以前からの既存株主(創業者、役員、VC、事業会社等) |
| ロックアップ期間 | 90日間または180日間が一般的(任意であるため、稀に5年(インテグラルの事例)等も) |
| 解除条件 | 期間経過または価格条件達成(公開価格の1.5倍以上等) |
| 法的拘束力 | 契約上の拘束のみ(法的罰則規定なし) |
| 開示場所 | 有価証券届出書・目論見書「募集又は売出しに関する特別記載事項」 |
ロックアップの解除条件
任意ロックアップには、主に「期間」と「価格」の2種類の解除条件がある。
制度ロックアップとの違い
| 比較項目 | 制度ロックアップ | 任意ロックアップ |
|---|---|---|
| 根拠 | 証券取引所の上場規則 | 主幹事証券会社との任意契約 |
| 対象者 | 上場直前期以降に第三者割当で株式等を取得した者 | 上場直前期以前からの既存株主 |
| 期間 | 上場日以後6ヶ月間(原則) | 90日間または180日間(柔軟に設定可) |
| 価格解除 | なし | 1.5倍条項等を設定可能 |
| 目的 | 短期利得行為の防止 | 株価安定化・投資家保護 |
| 確約書 | 証券取引所への提出が必須 | 主幹事証券会社と締結 |
株主属性別の設定パターン
任意ロックアップの期間・条件は、株主の属性に応じて異なる設定がなされることが多い。
経営陣(創業者・役員)
180日間または360日間の期間のみ等(価格解除なし)。経営へのコミットメントを示す観点から、長期かつ厳格な条件が設定される傾向。5年などの事例もある。
ベンチャーキャピタル(VC)
純粋な売り圧力となりかねない観点と、現金化ニーズを調整して設定する。例えば、90日間+1.5倍条項等。投資回収の必要性から、主幹事と丁寧に相談を行う必要あり。
事業会社・戦略的投資家
180日間程度等。そもそも事業提携の観点から継続保有を前提とするケースも多い。
従業員持株会
90日間程度。福利厚生の観点から、比較的短期の設定となることがある。
実務上のポイント
- 任意ロックアップの内容は、有価証券届出書・目論見書の「募集又は売出しに関する特別記載事項」の「ロックアップについて」の項目で開示される
- VCが多く参加している案件で価格解除条項がない場合、ロックアップ解除日に大量の売り注文が出て株価下落リスクが高まる
- 1.5倍条項がある場合、初値形成時に公開価格の1.5倍直前で初値がつくケースがある(1.5倍到達でVCの売りが出ることへの警戒から)
- 違反した場合の法的罰則規定はないが、違約金等の支払いを求められる契約上のリスクがある
開示書類での確認方法
任意ロックアップには法的な罰則規定がないため、違反事例も発生している(例:2021年モダリス事案)。ロックアップは紳士協定的な性格を持つことものの、違反時には多大な影響がある。また、ロックアップ解除後に必ず売却が行われるわけではなく、株主の属性や市場環境により実際の売却タイミングは当然異なる。
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