運用状況評価
Operating Effectiveness Evaluation
基本定義
運用状況評価とは、設計された内部統制が一定期間にわたって継続的かつ有効に機能しているかを確認・評価する手続のことである。サンプリングテスト等の手法により、統制活動が実際に実施されていることを検証する。
評価の概要
| 評価の目的 | 内部統制が有効に機能しているかを確認する |
|---|---|
| 評価の対象 | 統制活動の実施状況・運用実績 |
| 評価の観点 | 設計された統制が継続的に実施されているか |
| 主な評価手法 | サンプリングテスト(複数件の取引を抽出検証) |
| 評価の時期 | 整備状況評価の後に実施 |
| 根拠法令 | 金融商品取引法第24条の4の4(内部統制報告制度) |
主な評価項目
1
統制活動の実施状況
承認、照合、検証等の統制が実際に行われているか
2
統制の実施頻度
日次・週次・月次等、定められた頻度で実施されているか
3
統制の実施者
定められた担当者により統制が実施されているか
4
統制の証跡
承認印、ログ、チェックリスト等の証跡が残されているか
5
例外処理への対応
例外事項が発生した際に適切に処理されているか
評価手続のフロー
運用状況評価は、整備状況評価により設計の適切性が確認された後、以下の手順で実施される。
整備状況評価の完了確認
統制の設計が適切であることを前提条件として確認
サンプルサイズの決定
統制の頻度に応じて必要なサンプル数を決定
サンプリングテストの実施
無作為抽出した取引について統制の実施状況を検証
運用の有効性評価
統制が継続的に機能しているかを評価
不備の識別・是正
運用上の不備を識別し、改善を実施
サンプルサイズの目安
運用状況評価におけるサンプルサイズは、統制の実施頻度に応じて決定される。一般的な目安は以下のとおりである。
| 統制の実施頻度 | 年間実施回数 | サンプルサイズ(目安) |
|---|---|---|
| 日次 | 約250回 | 25件 |
| 週次 | 約52回 | 5件 |
| 月次 | 12回 | 2件 |
| 四半期 | 4回 | 2件 |
| 年次 | 1回 | 1件 |
上記は一般的な目安であり、統制の重要性やリスクの程度に応じてサンプルサイズを調整することがある。
サンプルサイズの算定根拠
サンプルサイズは、統計的サンプリング理論に基づき、以下の要素を考慮して決定される。
| 信頼水準 | 通常90%を採用。母集団から抽出したサンプルの結果が、母集団全体の状況を正しく反映している確率。 |
|---|---|
| 許容逸脱率 | 通常9%を採用。統制の不備(逸脱)が許容される上限の割合。これを超えると統制が有効に機能していないと判断される。 |
| 予想逸脱率 | 通常0%を前提。テスト前に予想される逸脱の割合。過去の評価結果等を踏まえて設定する。 |
| 母集団の規模 | 統制の実施回数(年間取引件数等)。母集団が小さい場合は、全件検証または少数サンプルで足りる。 |
上記の前提条件(信頼水準90%、許容逸脱率9%、予想逸脱率0%)のもとでは、母集団が250件以上の場合に必要なサンプルサイズは25件となる。この数値は、日本公認会計士協会の監査基準委員会報告書530「監査サンプリング」等で示されている統計的サンプリングの考え方に基づいている。
なお、統制頻度が低い場合(月次以下)は母集団自体が小さくなるため、統計的サンプリングではなく、実施回数に応じた件数(概ね2件程度)を抽出する方法が採られることが多い。
整備状況評価との比較
| 比較項目 | 整備状況評価 | 運用状況評価 |
|---|---|---|
| 評価の目的 | 統制の設計が適切か | 統制が有効に機能しているか |
| 評価の時期 | 期中に1回実施 | 一定期間にわたり継続的に実施 |
| 主な手法 | ウォークスルー | サンプリングテスト |
| サンプル数 | 原則1件(代表的な取引) | 統計的手法に基づき複数件 |
| 確認内容 | 統制の存在・設計 | 統制の継続的な実施状況 |
| 実施順序 | 先に実施 | 整備状況評価の後に実施 |
実務上のポイント
- 運用状況評価は、整備状況評価で設計の適切性が確認された統制に対してのみ実施する。設計上の不備がある状態で運用評価を行っても、有効性は担保されない。
- サンプリングでは、評価対象期間全体から無作為に抽出することが重要である。特定の時期に偏ったサンプルでは、通年での運用状況を適切に評価できない。
- テストの結果、不備(エラー)が発見された場合は、追加サンプルの抽出や不備の原因分析、是正措置の検討が必要となる。
- IPO準備段階では、N-1期に運用状況評価を本格的に実施し、上場申請前に内部統制の有効性を確認することが求められる。
- IT統制の運用評価では、アクセスログの確認、変更管理記録の検証、バックアップ実施記録の確認等が行われる。
注意
整備状況評価と運用状況評価は、内部統制評価における車の両輪である。運用状況評価で「有効に機能している」と評価されるためには、まず整備状況評価で「設計が適切」であることが前提となる。両方の評価を適切に実施することで、内部統制の有効性が担保される。
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