はじめに
2026年2月12日(米国時間)、ソフトバンクグループ(SBG)傘下のスマホ決済大手PayPay株式会社が、米証券取引委員会(SEC)にForm F-1(登録届出書)を正式に提出し、米NASDAQ市場での新規株式公開(IPO)に向けた手続きを公表しました。実現すれば、米証券取引所に上場する日本企業として過去最大規模のIPOとなる見通しです。
同日にはVisaとの戦略的パートナーシップ締結も発表されており、IPOと米国事業展開の両面で大きく動き出した格好となっています。本記事では、各社の報道内容を整理し、現時点で判明している情報をまとめます。
PayPayのNASDAQ上場申請の概要
Bloombergおよびロイターの報道によると、PayPayは米国預託証券(ADS)をNASDAQ Global Select Marketに上場することを目指しており、ティッカーシンボルは「PAYP」を予定しています。
NASDAQ Global Select Marketとは?
NASDAQには上位から「Global Select Market」「Global Market」「Capital Market」の3つの市場区分があります。Global Select Marketは最上位に位置し、財務要件・コーポレートガバナンス・流動性のいずれにおいても最も厳しい上場基準が課されます。Apple、Microsoft、Amazonなど大型グローバル企業の多くがこの区分に属しており、PayPayが時価総額3兆円規模での上場を目指す以上、最上位区分を選択するのは自然な判断といえます。
申請文書に記載された業績データは以下のとおりです。
Form F-1 記載の業績データ(2025年3月期 第3四半期累計)
| 項目 | 2025年4〜12月 | 2024年4〜12月 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 収入(Revenue) | 2,785億円 | 2,204億円 | +26.4% |
| 利益(Profit) | 1,033億円 | 289.6億円 | +256.7% |
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出典:PayPay Form F-1(SEC提出、2026年2月12日)
売り出す株式数や価格レンジは今後の申請で開示される予定であり、現時点では未定とされています。
PayPayの上場想定時価総額は1兆円~3兆円との報道
Bloombergは複数の関係者の話として、SBGがPayPayの企業評価額を100億ドル(約1兆5,300億円)以上とすることを目指していると報じています。一方、日本経済新聞は想定時価総額が「3兆円を超える見通し」と報じており、両者の間にはやや幅があります。
売出規模について日経新聞は、SBG側が売り出す株式は全体の1割程度にとどめると伝えています。IPO後もPayPayはSBGの子会社であり続ける方針で、連結決算への実質的な影響はない見通しです。
主幹事証券体制の報道
ロイター、Bloomberg等の報道を総合すると、主幹事(リード・アンダーライター)は以下の4社です。みずほが日系証券として、食い込んでいるのは、フロントでの連携があるからですかね。
- ゴールドマン・サックス
- JPモルガン
- みずほフィナンシャルグループ
- モルガン・スタンレー
なお、SBGが過半数を保有する投資先の米国上場としては、2023年の半導体設計大手Arm Holdings以来となります。
Paypayの上場スケジュール ―― 米政府閉鎖による遅延を経て
PayPayの米国上場をめぐる動きは、2025年から段階的に進められてきました。以下のタイムラインで、これまでの経緯と今後の見通しを整理します。
PayPay 米国IPO ―― これまでの経緯
2025年5月の上場準備表明から、2026年2月のSEC正式申請・Visa提携まで
LINEヤフー、PayPayの上場準備を公表
LINEヤフーの出沢剛社長が決算会見で、PayPayが株式上場の準備に着手したことを明らかにしました。米国市場での上場も視野に入れているとされました。
出典:日本経済新聞
Form F-1ドラフトをSECに非公開提出
PayPayがSECに対し、Form F-1の登録届出書ドラフトをコンフィデンシャル(非公開)で提出。ADS(米国預託証券)の米国証券取引所への上場を目指すもので、スケジュール・規模・価格は未定としていました。
出典:SoftBank Group / Bloomberg
米政府閉鎖でSEC審査が停止
当初2025年12月に予定されていた上場手続きが、米国政府機関の閉鎖(過去最長)によりSECの審査が停止し、スケジュールが後ろ倒しに。LINEヤフーの坂上CFOは「上場の目処が描きづらい」と説明。
出典:Reuters / ケータイ Watch
Form F-1を正式に公開提出
PayPayがSECにForm F-1を正式に公開提出。ティッカーシンボル「PAYP」でNASDAQ上場を目指します。主幹事はゴールドマン・サックス、JPモルガン、みずほ、モルガン・スタンレーの4社。
Visaと戦略的パートナーシップ締結
Visa Inc.との戦略的パートナーシップ契約の締結を発表。米国での新会社設立によるデジタルウォレット展開と、国内でのPayPay残高・カード・銀行のVisaクレデンシャル統合を2本柱に。
出典:PayPay プレスリリース / ITmedia / Impress Watch
仮条件決定・NASDAQ上場
日経新聞は「3月にナスダック市場に上場する」と報じています。想定時価総額は3兆円超、SBG側の売出比率は約1割の見通し。SEC審査の完了が前提のため、変動の可能性あり。
出典:日本経済新聞
※日本経済新聞は「3月にナスダック市場に上場する」と報じていますが、仮条件の決定や最終的なSEC審査の完了が前提となるため、今後の進捗次第では変動の可能性があります。
Visaとの戦略的パートナーシップ
IPO申請と同日の2月12日、PayPayとVisa Inc.は決済事業を中心とした戦略的パートナーシップ契約の締結を発表しました。提携の柱は大きく2つあります。
1. 米国事業の共同推進
PayPayが主導して米国に新会社を設立し、NFC(タッチ決済)とQRコード決済の双方に対応したデジタルウォレットの展開を目指します。初期ステップとしてカリフォルニア州など一部地域からQRコード決済の加盟店ネットワーク構築に着手する方針です。Visaは投資・テクノロジー・人材の拠出に加え、コンサルティングおよび専門知見の提供で支援します。
PayPayの中山一郎社長は記者会見で「米国の個人消費は2,600兆円と日本の9倍。いまだ現金市場が300兆円残っている」と述べ、巨大市場への参入意欲を示しました。具体的なサービス内容や提供開始時期は未定で、事業ライセンスの取得および関係当局の承認が必要となります。
2. 日本国内事業の連携強化
Visaの技術を活用し、「PayPay残高」「PayPayカード」「PayPay銀行」の3つの機能を1つのVisaクレデンシャル(認証情報)に集約するサービスを2026年中に提供開始する予定です。また、PayPay加盟店へのVisa決済受け入れ拡大にも取り組みます。
PayPayのKPI概要
PayPayは2018年にソフトバンク株式会社とヤフー株式会社(現LINEヤフー)の合弁会社として設立されました。QRコード決済サービス「PayPay」を中核に、クレジットカード、インターネット銀行、証券など金融サービスのエコシステムを構築しています。
- ①登録ユーザー数:7,200万人
- ②国内コード決済シェア:約3分の2
- ③2024年度の決済取扱高:PayPayカード連結で15.4兆円、単体で12.5兆円
- ④決済回数(2024年度):78億回
- ⑤2023年11月に金融庁より「特定社会基盤事業者」に指定
アナリストの見方
ロイターは、アナリストの見方として「PayPayの日本での存在感が強く、日本でのキャッシュレス決済へのシフトが進んでいることから、米国上場の同業フィンテック企業に対してプレミアムが付く可能性がある」と伝えています。
一方、TradingViewの分析記事では、デジタル決済市場の競争の激しさや、四半期ごとの業績開示が始まった後のユーザー獲得コスト・信用損失・コンプライアンスコストへの投資家の目線について、リスク要因として指摘されています。
まとめ
PayPayの米国IPOは、日本のフィンテック企業としては異例の規模・注目度となっています。F-1の正式公開提出とVisa提携という2つの大きなニュースが同日に重なったことで、グローバル展開への本気度がうかがえます。
今後の焦点は、仮条件・公開価格の決定、SEC審査の最終承認、そして上場後の米国事業の具体的な展開スケジュールです。続報が入り次第、本記事を更新する予定です。
主な報道ソース
- PayPay Corporation「Form F-1 Registration Statement」(SEC提出、2026年2月12日)
- Bloomberg「PayPayが米国でIPO申請、目指すは100億ドル以上の企業評価」(2026年2月12日)
- Bloomberg「PayPay Files for US IPO in Potential Record Listing for Japanese Company」(2026年2月12日)
- ロイター「PayPay、米ナスダックに新規上場申請 時価総額3兆円超との観測」(2026年2月12日)
- 日本経済新聞「PayPay、3月に米NASDAQ上場へ 時価総額3兆円超で1割売り出し」(2026年2月12日)
- PayPay株式会社「PayPayとVisa、戦略的パートナーシップ契約を締結」(2026年2月12日)
- ITmedia NEWS「PayPayがVisaと提携、米国進出へ」(2026年2月12日)
- Impress Watch「PayPayとVisa戦略提携 カード/コード決済融合」(2026年2月12日)
- 日本経済新聞「PayPayが米国進出、VISAと決済新会社」(2026年2月12日)
- SoftBank Group「PayPay Announces Confidential Submission of Draft Registration Statement」(2025年8月15日)
- ケータイ Watch「PayPayの上場は「目処、描きづらい」 米政府機関の閉鎖が影響」(2025年11月4日)
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