スピーダ「Japan Startup Finance 2025」速報が公開 ― IPO準備企業への示唆について ―


1. レポート概要

2026年1月19日、スピーダ スタートアップ情報リサーチが「Japan Startup Finance 2025」の速報レポートを公開しました。私自身、スピーダさんの本レポートは毎年、楽しみにしております。このレポートは、2025年の国内スタートアップの資金調達、ファンド設立、IPO、M&A動向を網羅的にまとめたものです。

参考: スピーダ スタートアップ情報リサーチ「選別と延長戦が進む──2025年スタートアップ資金調達動向」(2026年1月19日) https://initial.inc/articles/japan-startup-finance-2025

レポートによれば、2025年の資金調達総額は7,613億円(デット除く)と前年並みを維持しました。しかし、その内訳を見ると「選別」と「延長戦」という二つのキーワードで特徴づけられる構造変化が進んでいることがわかります。

なお、詳細データを含む本編レポートは1月27日に公開予定とのことです。


2. 押さえておくべき3つのポイント

3つのポイント
3つのポイント

ポイント1:資金調達は「選別」が進行

レポートでは、1社あたり調達額の平均値が3.1億円(前年同額)に対し、中央値は6,240万円(前年7,760万円)と約20%低下したことが報告されています。

この平均値と中央値の乖離は、資金が「勝ち筋が見える先」に集中していることを示しています。50億円以上の大型調達が全体の約2割を占める一方、小口調達が増加し、中間層が薄くなっているとのことです。

シリーズD以降では、金額・社数ともに増加しているものの1社あたり規模は縮小しており、これを「大型の成長資金を調達する企業」と「小刻みな延命・調整目的の資金調達」が混在する「延長戦」と表現しています。

ポイント2:投資家構成の変化 ― 事業法人の台頭

投資家タイプ別では、VCが前年比8%減少する一方、事業法人は320億円増の1,480億円へと拡大しています。特に10億円以上の大型調達では、事業法人の比重が高まっているとのことです。

調達額上位には、NTTグループから調達したMujin、トヨタグループ(ウーブン・バイ・トヨタ)から調達したインターステラテクノロジズなど、大手事業法人との協業を伴う案件が並んでいます。

一方、ファンド設立は本数・総額とも増加したものの、中央値は40億円から30億円へ低下。レポートは「フォローオン余力を弱め、ミドル・レイターの資金ギャップを拡大させる可能性がある」と指摘しています。

ポイント3:EXIT環境の変化 ― IPO減少とM&A高水準

2025年のIPOは108社と前年133社から減少し、うちスタートアップは過去10年で最低の31社にとどまりました。背景には、2025年9月に公表されたグロース市場の上場維持基準見直し(2030年から「上場5年経過後に時価総額100億円以上」)の影響があるとみられています。

注目すべきは、スタートアップIPOの初値時価総額中央値が前年89億円から135億円へ上昇している点です。レポートは「収益性の裏付けがより強く求められる傾向」を指摘しています。

一方、M&Aは167件と高水準を維持。みずほ銀行によるUPSIDER株式70%取得(460億円)や、IPO申請準備中だったThinkingsがM&Aを選択した事例など、「IPOを唯一の出口とする考え方が見直されつつある」動きが紹介されています。


3. IPO準備企業への示唆

IPO準備企業への示唆として考えられること
IPO準備企業への示唆として考えられること

レポートの内容を踏まえ、IPO準備企業として意識すべきポイントを整理してみます。

時価総額100億円を前提とした事業計画へ。 上場維持基準の見直しはまだ「出口」の話ですが、すでに「入口」段階から企業の目線が変化していることをデータは示しています。IPO準備の初期段階から、この規模感を前提とした計画策定が求められます。私の観測範囲では、証券会社も時価総額100億円基準(あるいはそれ以上)を明確に持っている会社が多くなってきている印象です。

投資家構成の多様化を検討。 VCのフォローオン余力低下が懸念されるなか、事業法人や金融機関との関係構築も資金調達の選択肢を広げるうえで有効と考えられます。なお、事業法人からの調達は経営の独立性や関連当事者取引の論点が生じうる点には留意が必要です。ただし、事業法人からの調達は戦略的に事業提携もセットで行われることが多い点から、IPO後も単なる売り圧力と見做されることはあまり多くありません。この点も投資家構成を検討して調達することが重要ですね。

EXIT戦略の複線化。 IPO一本槍ではなく、M&Aや他市場(東京プロマーケットを経由したIPOや地方市場へのIPO等)への上場も含めた複数シナリオを持っておくことが、環境変化への対応力を高めます。


レポート詳細については元資料をご覧さい。

本稿は速報記事のサマリーです。調達額上位企業の詳細、VC属性別の分析、ファンド設立の個別動向など、より詳細なデータと分析については、元レポートをご参照ください。

スピーダ スタートアップ情報リサーチ「選別と延長戦が進む──2025年スタートアップ資金調達動向」 https://initial.inc/articles/japan-startup-finance-2025

本編レポート「Japan Startup Finance 2025」は2026年1月27日公開予定、オンライン解説セミナーは2月17日開催予定とのことです。


本記事は、スピーダ スタートアップ情報リサーチが公開したレポートの紹介を目的としています。IPO実務への示唆は筆者の見解であり、詳細は元レポートおよび一次資料をご確認ください。

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執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

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