スプレッド方式とは?株式発行における引受手数料の仕組み

この記事でわかること

  • スプレッド方式の定義と仕組みがわかる
  • スプレッド方式と外枠方式の会計処理の違いがわかる
  • 具体的な仕訳例で実務イメージがつかめる

(1)はじめにースプレッド方式の定義と特徴

スプレッド方式とは、企業が公募増資などにおいて、新株発行を行う際の引受手数料の支払方法の一つです。

「(株式)スプレッド」とは、株式公募増資において、ブックビルディング方式等によって決定された公開価格(すなわち募集価格)と、証券会社の引受価額との差額のことを指します。

公募増資においては、投資家から株式の販売代金として受け取った現預金等のうち一部を、引き受けた証券会社が取扱手数料(または引受手数料)として徴収し、残りの金額を引受価額として会社に払い込む方式が通常取られており、これをすなわちスプレッド方式と呼びます。

この方式では、以下のような流れで取引が行われます。

スプレッド方式による引受手数料の仕組み
投資家
発行価格・売出価格
(例:110円/株)
引受証券会社
100 引受価額
10 証券会社手取額
発行価格・売出価格と引受価額の差額が
証券会社の手数料であり、
「スプレッド」と呼びます。
引受価額
(例:100円/株)
会社・売出人等

(2)取引の具体的な流れ

スプレッド方式における取引は、以下の3つのステップで進行します。

ステップ1:投資家への募集・売出しの勧誘

引受証券会社は、発行価格・売出価格で、投資家への新規株式の募集・売出しの勧誘を行います。上記の例では、110円での募集・売出しの勧誘を行います。

ステップ2:引受証券会社への株式発行

会社は引受証券会社に対して引受価額で株式を発行・売却し、引受証券会社は投資家に対して発行価格・売出価格で株式を受け渡します。上記の例では、100円で引受けし、110円で投資家に対して株式を割り当てます。この差額10円がスプレッドとなります。

ステップ3:スプレッドの確定

110円と100円の差額が引受手数料=スプレッドとして処理する金額となります。通常のIPOなどでは8%程度が設定されることが多いです。

上記の例では、引受価額100円、募集価格110円の場合、10円の差額が証券会社の手数料収入=スプレッドとなります。

公募増資時における2つの会計処理方法(スプレッド方式・外枠方式)

公募増資時には、引受証券会社を通じて2つの株価(発行価格・引受価額の2つ)でのやり取りが行われることが分かりますが、以下のとおり、それぞれの価格に応じた会計処理(スプレッド方式による会計処理、外枠方式による会計処理)が存在しています。

ただし、結論としては、「スプレッド方式」での会計処理が行われることが通常です。

方法1:スプレッド方式(=引受価額)による会計処理(実務上の主流)
  • 引受証券会社による引受価額に基づき新株発行の会計処理を実施
  • 引受手数料については別途会計処理しない
  • シンプルで実務的な処理方法(ほぼすべての会社がこちらを採用しています。)
スプレッド方式による会計処理のメリット
  • 処理が簡潔で事務負担が少ない
  • 実務慣行として広く採用されている
方法2:外枠方式(=発行価格・売出価格)による会計処理(限定的な会計処理)
  • 実際の発行価格・売出価格に基づき会計処理を行う
  • 引受手数料は株式交付費として別途計上
  • 2取引基準により、実際の公募価格と引受価額それぞれに基づいたBS,PLが表示される。

上記のスプレッド方式は、手取りとなる株価100円で純資産の増加を認識する方法であり、ほとんどすべての会社がこのスプレッド方式による会計処理を採用しています。

一方、外枠方式は、110円で純資産の増加を認識する方法であり、手取りである100円との差額である10円をPLで費用認識する方法となります。ただし、外枠方式による会計処理はほとんど利用されていません。

具体的な仕訳例:設例で学ぶスプレッド方式の会計処理

A社のスプレッド方式による新株発行

前提条件

A社は、X1年6月に引受証券会社と株式引受契約を締結し、引受証券会社を通じて新株式の発行を行い、同年7月1日に登記によるみなし発行を受けた。

株式発行の諸条件:
  • 増加する資本金:50,000円
  • 発行株式数:1,000株
  • 引受価格:100円/株
  • 募集価格:110円/株
  • 払込期日:X1年7月1日

スプレッド方式による会計処理

【会計処理】
<払込期日(X1年7月1日)>
借方 貸方
現金預金 100,000 *1 資本金 50,000 *2
資本準備金 50,000 *3

*1 100円/株 × 1,000株 = 100,000円

*2 増加する資本金として登記する額

*3 払込みに係る額の2分の1を超えない額は資本金として計上せず、資本準備金として計上することができます

仕訳のポイント解説

スプレッド方式による会計処理(仕訳)の解説
1 借方の現金預金:引受価格(100円)× 発行株式数で計算
2 貸方の配分:資本金と資本準備金に2分の1ずつ配分(会社法の規定により柔軟に設定可能)
3 スプレッド部分:仕訳には表れない(引受証券会社の収入となる)

よくある質問(FAQ)

Q1:スプレッド方式と外枠方式の違いは?

スプレッド方式では手数料を別途支払わず、募集価格と引受価格の差額が手数料となります。

外枠方式では、募集価格で引受けた後、別途手数料を株式発行費用として会計処理します。

Q2:どのような企業がスプレッド方式を採用すべきですか?

ほとんどすべてのスプレッド方式による会計処理が採用されています。IPO(新規株式公開)や公募増資を行う上場企業、大規模な資金調達を行う企業に適しています。なお、スプレッドは、引受証券会社との交渉により決定されます。

Q3:スプレッドはどのくらいが一般的ですか?

通常のIPOなどでは8%程度、PO(公募増資)では数%程度となります。なお、ディールサイズと呼ばれる公募・売出金額の総額が大きくなった場合はスプレッドの料率が低下する傾向にあります。

まとめ

企業の成長戦略において、適切な資金調達は極めて重要です。スプレッド方式は、通常の会計処理として、ほとんどの企業で採用されています。本記事を参考に、正しい会計処理を選択し、円滑な資金調達を実現してください。

新株予約権付融資(ベンチャーデット)の会計処理を解説──複合金融商品としての区分法適用とIPO準備での注意点
全銀協が法務面の課題を整理した新株予約権付融資について、発行体側の会計処理の論点を解説。金融商品会計基準に基づく複合金融商品としての区分法適用、ストック・オプション会計基準の未公開企業特例が使えない理由、オプション評価・償却原価法の実務、IPO準備での注意点を整理する。
2026/02/21 | 会計関連
IPO支援サービス

IPOに精通した公認会計士の力で
あなたの会社のIPOを成功に導きます

株式会社プライムコンサルティングは、IPOを支援する専門家集団です。
監査法人・主幹事証券の立場からIPOを一貫して支援してきた実績を基に伴走します。

無料 まずは相談してみる

オンライン相談対応

執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

IPO準備についてのご相談を承ります

初回相談無料・オンライン対応可

お問い合わせ