2025年スタートアップ資金調達ランキング

AI・ロボティクスが上位独占、IPO市場への示唆を読む


STARTUP DBが発表した2025年の国内スタートアップ資金調達ランキングによると、年間調達額トップ3をAI・ロボティクス領域の企業が独占しました。1位のMujinは362億円、2位のTuringは240億円、3位のSakana AIは200億円(ちなみに、Sakana AIは昨年も383億円と調達ランキング1位です)と、いずれも単年で200億円を超える大型調達を実現しています。


STARTUP DB資金調達ランキングとは

本ランキングは、フォースタートアップス株式会社が運営するスタートアップ情報プラットフォーム「STARTUP DB」が毎月および毎年継続的に公表しているものです。登記簿から取得した調達日を原則とし、プレスリリース等の公式発表も補完的に集計したものです。私も毎月チェックしている公表物です。

引用元: STARTUP DB「国内スタートアップ資金調達ランキング(2025年1月-12月)」(2026年1月8日公表) https://lp.startup-db.com/media/articles/funding-ranking-202512


2025年 資金調達額トップ20

STARTUP DBより
STARTUP DBより

トップ20全体を見ると、年間調達額の合計は2,437億円に達しました。以下に全20社のランキングを掲載します。

2025年 資金調達額トップ20
順位企業名調達額事業内容累計調達最終調達日
1Mujin362.3億円ロボット制御プラットフォーム596.0億円2025/12
2Turing240.0億円完全自動運転AI305.6億円2025/11
3Sakana AI200.0億円生成AI基盤モデル539.8億円2025/11
4インターステラテクノロジズ168.2億円小型ロケット開発395.2億円2025/09
5LayerX150.0億円クラウド経費精算「バクラク」282.6億円2025/09
5カケハシ150.0億円クラウド電子薬歴「Musubi」300.2億円2025/07
7Terra Charge104.5億円EV充電インフラ297.4億円2025/08
8Gaudiy100.0億円ファンプラットフォーム138.1億円2025/05
8Spiber100.0億円構造タンパク質素材1,418.6億円2025/03
10キャディ93.0億円製造業AIプラットフォーム310.3億円2025/04
11シェアリングエネルギー91.6億円太陽光発電第三者所有267.9億円2025/12
12SkyDrive83.0億円空飛ぶクルマ430.0億円2025/07
13EDGECORTIX80.6億円AI半導体(ファブレス)175.0億円2025/11
14アキュリスファーマ80.0億円神経・精神疾患新薬開発175.5億円2025/07
14Third Intelligence80.0億円AGI研究開発80.0億円2025/11
16ウタイテ77.0億円2.5次元IPプロデュース126.0億円2025/05
17FRDジャパン76.0億円閉鎖循環式陸上養殖369.1億円2025/11
18LegalOn Technologies71.4億円リーガルテックAI286.0億円2025/07
19ペイトナー67.0億円フリーランス向けファクタリング110.5億円2025/07
20京都フュージョニアリング62.5億円核融合炉関連技術215.6億円2025/09
トップ20合計2,437.1億円
出所:STARTUP DB(2026年1月8日公表)より引用

領域別の傾向

トップ20を領域別に見ると、AI関連が7~9社(Mujin、Turing、Sakana AI、キャディ、EDGECORTIX、Third Intelligence、LegalOn Technologies、LayerX、カケハシ)と最も多く、調達額合計は約927~1,227億円に達します。次いでエネルギー・環境関連・モビリティ関連が4社(Terra Charge、シェアリングエネルギー、SkyDrive、京都フュージョニアリング)で約299億円、SaaS/クラウドは逆に2社(LayerX、カケハシ)で300億円となっています。

なお、累計調達額が1,000億円を超えるSpiber(1,418.6億円)ですが、構造タンパク質という素材領域で長年研究開発を続けてきた同社は、国内スタートアップの中でも群を抜いた累計調達額を誇ります。一方で、経営に難航している報道もあったりしますので、今後の動向に注目ですね。 また、累計調達額300億円超の企業が9社存在することも、日本のスタートアップエコシステムの成熟を示していると考えられます。


2024年との比較:AI領域への集中が鮮明に

2024年版のランキングでは、1位がSakana AI(383億円)、2位が五常・アンド・カンパニー(334億円)、3位がエナジーグリッド(315億円)でした。

2024年 vs 2025年 トップ3比較
順位2024年調達額2025年調達額
1Sakana AI
生成AI
383億円Mujin
ロボティクス
362.3億円
2五常・アンド・カンパニー
マイクロファイナンス
334億円Turing
自動運転AI
240.0億円
3エナジーグリッド
電力
315億円Sakana AI
生成AI
200.0億円
出所:STARTUP DB各年版より筆者作成

1〜3位の比較においては、2024年は生成AI(Sakana AI)に加え、マイクロファイナンス(五常・アンド・カンパニー)や電力事業(エナジーグリッド)といった非テック・非AI領域の企業がランクインしていました。一方、2025年はトップ3すべてがAI・ロボティクス領域となり、生成AI、自動運転AI、産業用ロボットと「広義のAI」がランキングを独占する形となっています。

この傾向は、グローバルな生成AIブームの影響が日本のスタートアップ投資にも本格的に波及していることを示唆しているといえるかもしれません。

引用元: STARTUP DB「国内スタートアップ資金調達ランキング(2024年1月-12月)」 https://journal.startup-db.com/articles/funding-ranking-202412


IPO実務家の視点

上場観測が出ている企業も

TuringのHPより
TuringのHPより

上位企業の中では、2位のTuringについてIPO観測が報じられています。同社CEOの山本一成氏はSNS上で「1兆円上場」を目標として公言しており、2024年にはCFOとして投資銀行出身の人材を招聘しました。まだまだ噂段階かもしれませんが、ナスダック上場の可能性を指摘する声もあるようです。

引用元: 自動運転ラボ「自動運転で打倒テスラ掲げるTuring、ナスダック上場か?検索回数が67倍に急増」(2025年1月31日) https://jidounten-lab.com/u_52276

一方、MujinやSakana AIについては、いずれもユニコーン企業として注目されているものの、現時点で具体的なIPO観測報道は確認できていません。ただし、ここまでの規模の会社ですと、いずれにせよIPOを目指しているのは事実でしょう。

未上場で数百億円調達できる時代に、IPOの意義とは

今回のランキングが示すように、未上場のまま数百億円規模の資金を調達できる環境が日本でも整いつつあります。かつてはIPOが大型資金調達、大型EXITの唯一の手段でしたが、現在ではレイターステージのVC、政府系ファンド、事業会社CVCなど多様な資金の出し手が存在します。

こうした環境変化は、IPO実務に携わる者にとっていくつかの示唆を含んでいます。

まず、M&AによるEXITの選択肢が現実味を増しているという点です。大型の未上場企業が増えることで、買い手となる上場企業やPEファンドにとっても魅力的な投資対象が増加します。2023年末には、人事評価クラウドを手がけるHRBrainが、スウェーデンのPEファンド大手EQTによる過半数取得という形でのEXITを選択しました。PEファンドがスタートアップにマジョリティ投資を行うのは国内初の事例とされ、同社は上場せずにEQTの支援を受けながら成長を加速させ、ユニコーン級に成長してからIPOを目指す方針を示しています。また、2025年にはラクスルが1,200億円でMBOを実施するなど、上場企業の非公開化も進んでいます。もちろん、業種業態やビジネスモデルによりますが、スタートアップ側から見れば、IPOだけが目下のゴールではなく、M&Aそれ自体や、M&Aを経由したIPOも有力な選択肢となっているといえるかもしれません。

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引用元: 日本経済新聞「欧州系EQT、人事管理ソフト新興買収 企業価値200億円」(2023年11月27日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB275SI0X21C23A1000000/

また、「拙速なIPO」を避ける傾向も強まっていると考えられます。未上場で十分な資金調達が可能であれば、上場準備にかかるコストや上場後の開示負担を考慮し、事業基盤が十分に固まるまでIPOを先送りするという判断も合理的です。結果として、IPO時の企業規模が大型化し、グロース市場における「小粒上場」への批判とも呼応する動きとなっています。

IPO実務家としては、こうしたスタートアップの資金調達環境の変化を踏まえ、「なぜこのタイミングでIPOを選択するのか」という問いに対する説得力のあるストーリーが、今後ますます重要になっていくと思われます。


参考文献・出典

STARTUP DB

報道


本記事は、STARTUP DBのレポートを紹介し、IPO実務家の視点からコメントを加えたものです。個別企業の上場可能性について予測・推奨するものではありません。

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執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

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