ティアフォー(593A)東証グロース上場へ — 訂正届出書で想定価格1,015円・時価総額644.8億円が確定

ティアフォー(593A)東証グロース上場へ — 訂正届出書で想定価格1,015円・時価総額644.8億円が確定

2026年6月29日付の訂正有価証券届出書で想定発行価格1,015円・時価総額約644.8億円が確定。当初S-1方式で「未定」だった主要数値が出揃ったため、改めてオファリング構造とPSR比較で整理しました。

UPDATE 2026年6月29日付の訂正有価証券届出書で募集条件が確定しました(クリックで詳細)

本記事は当初、S-1方式により公開価格・発行株式数等が「未定」の状態で公開していましたが、訂正届出書で以下の主要数値が確定したため、本文を更新しています。

上場日2026年7月22日
証券コード593A
想定発行価格1,015円
想定時価総額約 644.8 億円
想定吸収金額約 250 億円
公募株式数17,449,600 株(国内 8,828,900 / 海外 8,620,700)
国内売出3,968,400 株
OA上限3,212,700 株

株式会社ティアフォー(証券コード593A)は、2026年6月9日にS-1方式で有価証券届出書を提出した後、2026年6月29日付の訂正有価証券届出書において、公募・売出株式数および想定発行価格を含む募集条件を確定させました。当初は公開価格・吸収金額・上場日のいずれも「未定」とされていましたが、本訂正により、上場日は2026年7月22日、想定発行価格は1株1,015円、想定時価総額は約644.8億円と確定。当初「100〜300億円」とされていた募集規模も、公募・売出・OA合計で約250億円(想定価格ベース)の吸収金額として具体化されました。

ティアフォーは、自動運転の社会実装を目的に2015年に設立された、名古屋大学発のディープテック企業です。オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」を技術的基盤に据え、バスや特殊用途車両を中心とした自動運転レベル4の社会実装を推し進めてきました。当初S-1方式の段階では各種数値が「未定」でしたが、本記事は訂正届出書で具体化した条件を踏まえて、改めてオファリング構造とバリュエーションを整理する内容としています。

企業概要

創業経緯と社長の経歴

ティアフォーは、「自動運転の民主化」をビジョンに掲げ、2015年に設立されました。同社の出発点となったのは、創業メンバーの一人であり代表取締役CEOを務める加藤真平氏が、名古屋大学の研究室においてオープンソースとして公開した自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」です。2015年8月に初めて公開されたAutowareは、特定の事業者に依存しない中立的な形で広く公開され、国内外の研究機関や企業による技術検証・応用が進んだことから、自動運転分野における共通基盤としての役割を広げていきました。

加藤氏が起点となったこの取り組みの根底にあるのは、「創造と破壊」というミッションです。これは、従来にないアプローチで前例のない課題に挑み、新たな価値を大胆に創造するという同社の姿勢を表現したものとされています。安全な自動運転技術に資するあらゆるテクノロジーを開放し、様々な組織・個人がその発展に貢献できる開放的なエコシステムを構築する——この思想が、オープンソース戦略という同社独自のビジネスモデルへとつながっています。

設立後の同社は、ソフトウェアの開発のみならず、試験走行やデータ収集等を含む関連サービスの提供を段階的に拡大してきました。近年では、地域交通課題に対応する形で、地方自治体や交通事業者との取組みを通じた自動運転システムの実装が進展しています。2024年12月には本社を東京都品川区北品川に移転し、産学官との連携を通じて、安全かつ持続可能な自動運転の社会実装を目指す体制を整えています。

事業内容と特徴

Autowareとプロダクトとの関係性
Autowareとプロダクトとの関係性

ティアフォーは、オープンソース自動運転ソフトウェア「Autoware」を技術的基盤として、その商用利用を実現するための補完的なプロダクト群を開発・提供する企業です。同社グループは自動運転事業の単一セグメントで構成され、日本国内を中心に事業を展開しています。

同社最大の特徴は、オープンソースを軸とした技術戦略にあります。自社の自動運転技術をオープンソースとして提供することで、特定の企業や国家に依存しない中立性・透明性を確保し、グローバルに分散した開発者や研究者との協働開発を可能にしています。Autowareの知的財産権は、2018年に設立された一般社団法人「The Autoware Foundation」に帰属し、産業界・学術機関・政府機関・非営利団体など100社超の多様な組織が加盟しているとされています。2026年4月時点で、AutowareへのGitHub上のコード貢献者数は600人、そのうち68.2%が同社およびパートナー企業に属さない外部貢献者であり、受領した「Star」数は11,584件に達しているとのことです。

マイクロオートノミー・アーキテクチャとリファレンスデザインのイメージ図(Autoware→TIER IVプラットフォーム→リファレンスデザイン→OEMパートナーへの展開) | source: 有価証券届出書 | page: 22
マイクロオートノミー・アーキテクチャとリファレンスデザインのイメージ図(Autoware→TIER IVプラットフォーム→リファレンスデザイン→OEMパートナーへの展開) | source: 有価証券届出書 | page: 22

差別化の核となるのが、同社独自の設計思想「マイクロオートノミー・アーキテクチャ」と、それに基づく「リファレンスデザイン」です。共通の要素技術群を基盤としつつ、用途や車種の異なる複数の事業領域に対し、効率的かつ柔軟に自動運転レベル4対応車両を開発・展開できる設計となっています。顧客(主に自動車OEMや特殊用途車両のメーカー)は、一から自動運転技術を開発する必要がなくなり、検証済みのリファレンスデザインに基づいて、各社固有の機能だけに特化した「ラストワンマイル」のカスタマイズに注力できる仕組みです。具体的なプロダクトとして、車載用ソフトウェアパッケージ「Pilot.Auto(パイロットドットオート)」、クラウド型開発・運用プラットフォーム「Web.Auto(ウェブドットオート)」、ハードウェアとソフトウェアを統合したリファレンスプラットフォーム「Edge.Auto(エッジドットオート)」を展開しています。

収益構造

同社グループの事業は、収益の性質に応じて3つのサービスに大別されます。2025年9月期における売上高構成比は、研究機関や政府委託事業などを支える「Solution Service(ソリューションサービス)」が2,812百万円(43.9%)と最大で、自動運転バス等の実証実験・運用を担う「Mobility Service(モビリティサービス)」が2,267百万円(35.4%)、自動車OEM向けの量産化開発を担う「Development Service(デベロップメントサービス)」が1,330百万円(20.8%)となっています。各サービスは、車両販売やハードウェア販売、エンジニアリングサービスといった「ワンタイム収益」と、ソフトウェアライセンスや保守運用サービスといった「リカーリング収益」の双方を含んでいます。

現時点では地方自治体等における自動運転レベル2からレベル4の実証実験・定期運行に関連する売上が主な構成要素ですが、同社は将来的な車両量産を見据え、量産フェーズへの移行に応じてリカーリング収益を拡大していく構想を描いています。組織面では、連結従業員数は413名(2026年4月30日現在、ほか平均臨時雇用者数188名)。提出会社単体の平均年齢は37.6歳、平均勤続年数は3.17年、平均年間給与は11,000千円と、ディープテック企業らしい高い人材水準がうかがえます。

市場環境

国内の車両タイプ別市場規模グラフ(バス・特殊用途車両・タクシー・トラックの稼働台数と年間買替需要) | source: 有価証券届出書 | page: 31
国内の車両タイプ別市場規模グラフ(バス・特殊用途車両・タクシー・トラックの稼働台数と年間買替需要) | source: 有価証券届出書 | page: 31

同社が主戦場とする国内モビリティ産業は、車両タイプごとに大きな潜在市場を抱えています。届出書によれば、国内の稼働台数はバスが6.2万台、特殊用途車両が9.4万台、タクシーが19.4万台、トラックが88.1万台と推定されており、深刻化するドライバー不足を背景に、これらの領域での自動運転需要は今後拡大していくとみられます。同社は海外展開も視野に入れており、CES 2026では自動運転レベル4+に向けたエンドツーエンドAIを展示し、日米欧3拠点での試験走行を進めているとのことです(Car Watch, 2026年1月)。

この市場における参入障壁として大きいのが、自動運転技術そのものの開発難易度と、社会実装に必要な許認可・制度対応の蓄積です。自動運転レベル4の実現には、センシングから車両制御までの高度な技術統合に加え、公道での認可取得や運行管理体制の構築が不可欠となります。同社は2024年10月に長野県塩尻市、2025年3月に石川県小松市でレベル4の認可を取得しており、こうした実績の積み重ねが新規参入者にとっての障壁となっているといえそうです。

同社のポジショニングを特徴づけるのが、車両領域ごとに異なる事業戦略です。バス・特殊用途車両のように定型ルート運行や閉鎖環境での稼働が中心の領域では「先行逃げ切り(First-Mover)」のアプローチを取り、他社に先行してマーケットシェアを獲得することでドメインリーダーの地位を狙います。一方、海外勢が多額の研究開発費を投じるタクシー・トラック・乗用車の領域では「後方追い上げ(Fast-Follower)」を採用し、過度な投資を避けつつ技術のコモディティ化を見極めて迅速にシェア獲得を図る方針とされています。バス領域では2026年3月時点で全国39都道府県127地域での実証実験実績を有し、自治体・バス事業者向けに26台の販売実績があるとのことです。

実証実験・実装実績を有する地域マップ(39都道府県127地域、海外実績含む) | source: 有価証券届出書 | page: 33
実証実験・実装実績を有する地域マップ(39都道府県127地域、海外実績含む) | source: 有価証券届出書 | page: 33

業績推移

業績推移で注目すべきは、力強い売上成長と、それを上回る規模で継続する先行投資型の赤字です。連結ベースの売上高は、第9期(2024年9月期)の3,871百万円から第10期(2025年9月期)には6,410百万円へと前期比65.6%増と大きく伸長しました。一方で、経常損失は4,834百万円から5,504百万円へと拡大しています。これは研究開発活動や事業基盤整備に伴う先行投資負担が継続したことによるもので、自動運転という長期視点の事業に資金を投下し続けている同社の姿勢を反映しています。

2024年09月期 2025年09月期
売上高(千円) 3,871,0006,410,000
経常利益(千円) -4,834,000-5,504,000
純利益(千円) -4,834,000-4,799,000
EPS(円) -113.35円-108.29円
総資産(千円) 21,577,00017,580,000
純資産(千円) 18,007,00013,170,000
自己資本比率 0.8%0.7%
従業員数 356名392名

特に留意すべきは資金繰りの動向です。営業活動によるキャッシュ・フローは第10期に△7,282百万円とマイナス幅が拡大し、現金及び現金同等物の期末残高は第9期末の14,420百万円から第10期末には6,932百万円へと半減以下に減少しました。自己資本比率は73.5%と財務基盤自体は厚いものの、手元資金の急速な減少は、今回のグローバル・オファリングによる大型資金調達が事業継続上きわめて重要であることを示しています。配当は実施しておらず、当面は成長投資を優先する方針とみられます。

株主構成

同社の株主構成は、事業会社とベンチャーキャピタルが混在する、ディープテック企業らしい顔ぶれです。筆頭株主はSOMPOホールディングス(持株比率21.3%)で、これに代表取締役CEOの加藤真平氏(11.0%)が続きます。さらにジャフコSV5(6.9%)、ヤマハ発動機(6.6%)、いすゞ自動車(5.7%)、KDDI(4.0%)、アイサンテクノロジー、UTEC、スズキ、トヨタ自動車、ブリヂストン、三菱商事といった事業会社・VCが名を連ねており、自動車・保険・通信といった幅広い業界の事業会社が出資している点が特徴的です。

投資判断の観点では、複数のベンチャーキャピタルおよび事業会社が大株主に含まれるため、上場後の需給における潜在的な売り圧力には留意が必要です。当初は売出株式数も未定で、需給インパクトの定量評価が困難でしたが、訂正届出書で売出人とその株数が確定したことで、後述のとおり需給構造を具体的に読み解けるようになりました。一方で、SOMPOホールディングス、加藤CEO、ジャフコ、ヤマハ発動機、いすゞ、KDDI、トヨタ、ブリヂストン、三菱商事をはじめとする主要株主には、上場(売買開始)日から180日間のロックアップが付されており、短期的な大量売却に一定の歯止めがかかる設計となっています。

株主名 所有株式数 所有比率 ロックアップ
SOMPOホールディングス株式会社1
11,112,500
21.30%
180日
加藤 真平12
5,750,000
(750,000)
11.00%
(1.40%)
180日
ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合1
3,610,000
6.90%
180日
ヤマハ発動機株式会社1
3,459,490
6.60%
180日
出川 章理14
3,300,000
6.30%
180日
いすゞ自動車株式会社1
3,000,000
5.70%
180日
KDDI株式会社1
2,070,000
4.00%
180日
アイサンテクノロジー株式会社1
1,575,000
3.00%
180日
UTEC 4号投資事業有限責任組合1
1,570,000
3.00%
180日
二宮 芳樹14
1,400,000
2.70%
180日
合計
52,207,490
(6,133,000)
100.00%
(11.70%)
(注)1.「氏名又は名称」欄の※の番号は、次のとおり株主の属性を示します。 ① 特別利害関係者等(大株主上位10名) ② 特別利害関係者等(当社代表取締役) ③ 特別利害関係者等(当社取締役)、かつ元従業員 ④ 当社の元取締役及び元監査役 ⑤ 当社の執行役員(元従業員) 2. ()内は新株予約権による潜在株式数及びその割合であり、内数であります。 3. 株式総数に対する所有株式数の割合は、小数点以下第3位を四捨五入しております。
※本ロックアップ情報は任意ロックアップのみを表示しています。制度ロックアップは別途適用される場合があります。

成長戦略

ティアフォーの成長戦略は、自動運転市場の発展段階に応じて事業の重心を移していく、段階的なシナリオに基づいています。足元では地方自治体等における自動運転バスの実証実験・導入を推進する「Mobility Service」が中心ですが、自動運転車両の需要が高まり量産フェーズへ移行するに伴い、自動車OEM向けの量産化開発を担う「Development Service」が事業の中核的な役割を担っていくことを想定しているとされています。量産フェーズに移行した後は、販売された車両一台ごとに対価を得るライセンスモデルやロイヤルティモデルが適用され、スケールに応じた継続的な収益創出が見込まれます。

量産化に向けた布石として、同社は大手自動車メーカーとの協業を着実に進めています。2026年5月時点で協業先のOEMおよびTier1サプライヤーは18社に及び、いすゞ自動車とは同社大型EVバス「ERGA EV(エルガEV)」の自動運転共同開発プロジェクトを推進、トヨタ自動車とは次世代モビリティ「e-Palette」の自動運転化開発を進めているとのことです。こうした完成車メーカーとの連携は、量産フェーズにおける販売チャネルとリファレンスデザインの横展開を支える基盤となります。

今回の上場で調達する資金について、当初は「手取概算額100億円〜300億円」のレンジでしか示されていませんでしたが、訂正届出書では想定発行価格1,015円ベースで、国内募集における払込金額の総額が約76億円、海外募集を含む公募全体の発行価格総額が約90億円規模と具体化されました。これらの調達資金は、(1)AI技術および自動運転専用半導体に関する研究開発費、(2)将来の量産規模の供給を見据えたサプライチェーン構築・車載ユニットのコスト低減のための量産・事業拡張費、(3)エンジニア人材やグローバル事業運営人材の採用を中心とした組織拡張費、の3つに充当する予定です。研究開発・量産体制・組織の3方向への投資により、自動運転の社会実装を加速させる構えです。

IPOのオファリングの概要

公募・売出情報
上場市場
グロース
証券コード
593A
上場予定日
2026年7月22日
想定発行価格
1,015円
想定時価総額
64,477百万円
公募株式数(新株発行)
17,449,600株
売出株式数
3,968,400株
オファリングレシオ
33.7%
幹事証券会社
推薦証券
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 SMBC日興証券
主幹事証券
モルガン・スタンレーMUFG証券
元引受取引参加者
みずほ証券 SBI証券 大和証券 野村證券 マネックス証券 楽天証券 岡三証券 岩井コスモ証券 松井証券 東海東京証券 水戸証券
ティアフォーのIPOスケジュール
1
上場承認日
2026/06/09
想定: 1,015円
2
仮条件決定日
2026/07/06
1,015 〜 1,085円
3
BB期間
2026/07/06 〜 2026/07/10
4
公募価格決定日
2026/07/13
1,085円
5
上場日
2026/07/22

本IPOの特徴と留意点

本IPOは、上場承認前に有価証券届出書を提出するS-1方式を採用した、海外募集を含むグローバル・オファリングです。当初S-1方式の段階では、公開価格・時価総額・確定した上場日程・証券コードがいずれも「未定」とされていましたが、2026年6月29日付の訂正届出書において、証券コード593A、上場日2026年7月22日、想定発行価格1,015円公募・売出株式数の内訳が確定しました。仮条件は2026年7月6日、最終的な公開価格は2026年7月13日に決定される予定です。S-1方式は、市場環境の変化による価格変動リスクを軽減し、上場承認日から上場日までの期間を短縮できる手法とされ、キオクシアなど大型グローバル案件で採用されてきた方式です。

【ディールサイズ】当初は「募集金額100〜300億円」というレンジでしか示されていなかった案件規模が、訂正届出書により具体化しました。公募株式数は17,449,600株(国内 8,828,900株/海外 8,620,700株)、引受人の買取引受による国内売出は3,968,400株オーバーアロットメントは上限3,212,700株で、合計24,630,700株が市場に放出される構造です。想定発行価格1,015円ベースでの想定吸収金額は約250億円、上場時想定時価総額は約644.8億円となり、オファリング・レシオは約38.8%に達します。レンジの中間〜やや上寄りに着地した格好で、グロース市場としては大型の部類に入り、機関投資家の需要厚みが初値形成のドライバーとなります。

【オファリング構成】国内募集(8,828,900株)に加え、米国(Rule 144Aに基づく適格機関投資家向け)・欧州・アジアを中心とする海外募集(8,620,700株)を併せて行うグローバル・オファリングとして設計されており、海外比率は公募の約49%を占めます。ジョイント・グローバル・コーディネーターはMorgan Stanley & Co. InternationalおよびSMBC日興証券、共同主幹事には三菱UFJモルガン・スタンレー証券・モルガン・スタンレーMUFG証券・SMBC日興証券が並びます。OAに関連して、SMBC日興証券を割当先とする第三者割当増資(最大3,212,700株)も予定されています。

【株主構成と売出人】SOMPOホールディングス(21.3%)を筆頭に、加藤CEO(11.0%)、ジャフコ、ヤマハ発動機、いすゞ、KDDI、トヨタ、ブリヂストン、三菱商事などが大株主に名を連ねます。当初は誰がどれだけ売り出すかが未開示でしたが、訂正届出書で国内売出(3,968,400株)の売出人が明らかになりました。内訳は、ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合・UTEC4号投資事業有限責任組合・SMBC信託銀行(特定運用金外信託)・ジャフコSV5スター投資事業有限責任組合・出川理理氏・ソニーグループ・二宮芳樹氏・河口信夫氏・武田一哉氏・佐々木栄美子氏の10者で、VCおよび創業期からの個人株主の一部が部分換金を行う構図です。主要株主には上場日から180日間のロックアップが付されており、短期的な売り圧力は抑制される設計ですが、VC・事業会社の保有比率が高いため、ロックアップ解除後の需給は中長期的な留意点となります。

【その他特徴】同社は売上高6,410百万円(2025年9月期)に対し経常損失5,504百万円を計上する赤字企業であり、PER・PBRといった伝統的な株価指標は算出できません。当初は公開価格が未定でPSRすら計算不能でしたが、想定発行価格が確定したことで定量比較が可能となり、想定発行価格ベースのPSR(株価売上高倍率)は約10.1倍と算出されます。自動運転という巨大かつ未成熟な市場の将来性をどう織り込むかが、バリュエーションの中心軸になると考えられます。

バリュエーション比較

当初は公開価格が「未定」だったため、本記事の初公開時には「PSRや海外自動運転企業との比較は公開価格確定後に検証」と保留していました。今回、想定発行価格1,015円が確定し、想定時価総額644.8億円ベースでのバリュエーション比較が可能となったため、改めて整理します。同社は経常損失5,504百万円の赤字企業であるためPERは算出できず、時価総額・PSR(株価売上高倍率)を中心に同業海外企業・国内モビリティ関連企業との相対水準を検証します。

企業名コード時価総額売上高経常/営業利益率PSR売上成長率
ティアフォー593A約 644.8 億円(想定)64.1億円△85.9%(経常損失)約10.1倍+65.6%
Mobileye GlobalMBLY約 9,870 億円約2,963億円(2026予)黒字化進行約3.3倍+27%(Q1)
Aurora InnovationAUR約 1.87 兆円約6億円(TTM)大幅赤字3,000倍超(参考外)量産前
アイサンテクノロジー4667約 110.7 億円75.9億円(2026/3期)+10.0%(営業)約1.5倍+22.1%
GO株式会社581A約 1,745 億円314億円(2025/5期)+8.4%(経常)約5.6倍+31.2%

比較対象の選定基準:自動運転・モビリティプラットフォーム関連、東証およびNASDAQ上場
※ 時価総額の取得時点:ティアフォーは想定発行価格ベース(2026年6月29日訂正届出書)、Mobileye および Aurora は2026年6月26日終値ベース(出典:Yahoo Finance、1USD=150円換算)、アイサンテクノロジー および GO は2026年6月29日終値ベース(出典:Yahoo!ファイナンス)。PSRは各社の時価総額÷直近通期売上高で算出。

時価総額の絶対水準で見ると、ティアフォーの想定644.8億円は、国内のアイサンテクノロジー(110.7億円)を上回りつつも、GO(1,745億円)の約4割、Mobileye(約9,870億円)の15分の1にとどまる規模感です。一方、PSR約10.1倍で見ると、Mobileyeの3.3倍・GOの5.6倍と比較して相応に割高な水準にあります。これは、足元の売上規模が小さいぶん、自動運転レベル4の社会実装と量産化を見据えた将来価値(オプション・バリュー)が既に株価に織り込まれていることを示唆します。一方で、Aurora Innovation(PSR3,000倍超)のような完全プレ・レベニュー段階ではなく、売上64億円・前期比+65.6%の高成長実績を伴っている点で、相対的に「実態のあるディープテック」と評価する余地がありそうです。仮条件・公開価格の確定後に時価総額・PSRが再計算される際は、改めて同業との相対水準を点検する必要があります。

初値に関する考察とコメント

以上の考察を基に、初値に関するプラス材料、マイナス材料は以下のとおりです。当初は「未定」のオンパレードで需給インパクトもバリュエーションも輪郭が掴めない状態でしたが、想定発行価格1,015円・想定吸収金額約250億円・時価総額644.8億円という具体的な数値が固まったことで、需給とバリュエーションの両面で評価軸が定まりました。グロース市場としては大型かつ、想定PSR約10倍と相応に高めの水準で評価される設計となっており、機関投資家の需要次第で初値形成が変動しやすい局面といえそうです。

プラス材料
  • +売上高前期比65.6%増の高成長を実数値で確認
  • +Autowareによるグローバル技術優位と海外募集の参加余地
  • +トヨタ・いすゞ等大手OEMとの量産化協業18社
  • +想定時価総額644.8億円とディープテックとして本格評価
  • +主要株主・加藤CEOに180日ロックアップ付与
マイナス材料
  • -想定吸収金額約250億円・オファリングレシオ38.8%で需給重い
  • -想定PSR約10倍はMobileye・GO比でも相応に割高
  • -経常損失5,504百万円・営業CF△72.8億円の赤字継続
  • -ジャフコSV5・UTEC等10者の売出による既存株主キャッシュアウト

出典

  • 有価証券届出書および訂正有価証券届出書(新規公開時・EDINET、株式会社ティアフォー、2026年6月9日・6月29日提出)
  • 東京証券取引所 新規上場会社概要
  • 各社IR資料、Yahoo!ファイナンス(finance.yahoo.co.jp)、Yahoo Finance(finance.yahoo.com)
  • Car Watch「ティアフォー、エンドツーエンドAIを含むレベル4+の自動運転機能をCES2026で訴求」

※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いいたします。本IPOはS-1方式により、2026年6月9日に当初の有価証券届出書、2026年6月29日に訂正届出書が提出され、本記事はそれを反映したものです。最終的な公開価格は2026年7月13日に決定されます。

執筆者

石塚 康一

Koichi Ishizuka

株式会社プライムコンサルティング 代表取締役/公認会計士

北海道大学農学部を卒業後、監査法人トーマツ 旧トータルサービス事業部入所。IPO監査に一貫して従事し、その後、野村證券投資銀行部門へ転職。公開引受部・法人営業部門にて、IPOアドバイザリーや、IPO準備企業の発掘、オファリングの支援等を行う。2024年、株式会社プライムコンサルティングを創業し、独立した立場からIPOの伴走を行う。

IPO準備についてのご相談を承ります

初回相談無料・オンライン対応可

お問い合わせ
IPO支援サービス

IPOに精通した公認会計士の力で
あなたの会社のIPOを成功に導きます

株式会社プライムコンサルティングは、IPOを支援する専門家集団です。
監査法人・主幹事証券の立場からIPOを一貫して支援してきた実績を基に伴走します。

無料 まずは相談してみる

オンライン相談対応

本レポートは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではありません。

最新のIPO情報をメールで受け取る

承認・仮条件・公募価格・上場日をお届け。無料・いつでも解除可能。

登録する